オルガニスト楽屋話

第219話 仙川教会での演奏会 ---2018.11.19.

一昨日、11月17日、日本基督教団仙川教会で演奏させていただきました。オランダのライルという製作家による 2段鍵盤とペダル、規模は大きくないものの、とても美しい音色の楽器でした。まずは演奏曲目を決めるために、 夏より前に一度試奏させていただきました。コンサートホールのオルガンのように大きな楽器は、おおよそ どんな楽器か想像がつきます。けれでも小さなオルガンの場合、その楽器について、楽器の特徴を知るには実際に試奏出来ればそれが一番です、 遠方にある場合は無理ですが、今回の場合は試奏させていただきました。 響きの良い礼拝堂に美しく歌い、魅力溢れる楽器で、すっかり惚れ込んでしまい、 演奏させていただきます日をとても楽しみにしていました。

オルガンというのは一台一台違います、個性があります。手強いな、、と思う楽器も時にはありますが、 いつも心を楽器とひとつにして演奏しています。しかしこのオルガンは最初から心通じ、嬉しい感触のオルガンとの出会いでした。

そして何より嬉しく光栄だったのが、私が留学から帰国し、その翌年、初めて海外での大きな演奏会がドイツのボンでありました。 「現代オルガン音楽週間」という音楽祭で、私は全曲、邦人の作品で臨みました(と言いますか、それが主催者からの依頼でした)。コンビネーションのないオルガンで、 ドイツ人とアメリカ人の男性二人にアシスタントをしてもらい、これは私にとって結構大変な演奏会でした。この演奏会があった時に、 仙川教会の牧師でいらっしゃる大串肇先生もボンにいらして、覚えていてくださった、、ということ。そしてその ご縁もあって今回弾かせていただいた、ということです。

成城学園駅から甲州街道へ抜ける道沿いにあるこの教会、中学生の頃、この近くでテニスを習っていました。そして高校時代はオルガンの レッスンに毎週この教会前を通り、こんな日が来るとは思わず、オルガンに夢中になりレッスンに通っていた私がいました。 教会の存在は以前から知っていましたが、新しい礼拝堂が建ち、オルガンが設置されたのです。

真っ白で北欧の建物を思わされるような、ステンドグラスも美しい礼拝堂。天井が高く、よく響きます。何よりもオルガンの ストップひとつずつが全て美しく歌うこと。そして繊細なタッチを持ち、表現力豊かなこと。様々な細かな音楽的ニュアンスにも答えてくれます。 充分なリハーサル時間をいただきましたが、笛に送る風をコントロールし、一音一音に命を吹き込んでいく、音符が表情豊かな音へと替わっていく、 ああなんて楽しい作業でしょう!音楽創りに没頭しました。実に弾くことが楽しい楽器でした。

そうして迎えた演奏会、会堂は多くのお客様でいっぱいになりましたが、響きはほとんど変わらず、会堂はオルガンの音で満たされました。 聴いてくださる方も近く、曲目の解説やオルガンのことなど、短いトークを交えながらの演奏会、お客様も暖かい雰囲気で、こんな会もアットホームでいいな、と感じた私でした。

多くの場合、オルガニストは遠くで後ろ姿、ほとんど見えない。あるいはバルコニーの上で一切見えないことすらあります。 挨拶、お辞儀の時くらいでしょうか、姿が見えるのは。また聴衆のお顔もスポットライトで、あるいは後ろを向いて座られているので見えません。 衣装は遠目に、そして後ろ姿が映えるもの、、を考えます。(細かいことは結構いい加減になっていまして、、)
けれども今回の演奏会は、オルガンは礼拝堂前方にあり、しかも座席がすぐ後ろに。聴きにいらした方のお顔が見える距離です。 演奏会後、「演奏している姿(手)が見えて良かった」、、と。確かにこうしたシチュエーションも良かったと。

滅多に考えたこともなかったのですが、美容院に行ってセットをしてもらうことに。しかしならが、皆様はいかがでしょうか。 私は自分のヘアスタイルには結構拘りがあって、長い間、信頼できお気に入りの美容師さんにお願いしています。 髪型も大きく変えることもなく、ショートの経験はなくずっとセミ・ロングです。お洋服は買い直しが出来るし、気に入らなければ着なければ良い。でも ヘアスタイルは1カ月〜2カ月我慢しなければなりません。その日、髪型が気に入らないと、一日の気分さえ悪くなります。 実はCDジャケットや取材の撮影、テレビ出演、、ヘアメイクさんが付くことがあるのですが、これまで ヘアスタイルに関して気に入ったことがありません、本有に我儘でごめんなさい、、。

とはいえ、私の行きつけの美容院は都心にあり11時から、間に合わない。それでネットで色々調べました、そして予約。事前にお店へ行き、スタイリストさんとも相談もしました。 お若くて可愛い女性のヘアスタイリストさん、お気に入りのふわふわハーフ・アップにしてくださいました。 まあたまにはこうした遊びも楽しみ(笑)。

余談ですが、ドイツで生活した時、美容院には驚きました。設備もカットの技術も本当に古くて遅れていて、、日本人は器用ですね。 そして今でもヨーロッパに行くと思うのですが、束ね髪やぶっつりカット・・あまり気にしない、かまわない、私の目からですがお洒落にしていないのが彼らですね。

この年になりまして、つくづく感じるのは、一貫して好きなこと、軸になること、やりたいこと、が 与えられていることは幸せだな、と。そして一音一、以前より音楽に対して優しい気持ちで向かえるようになったかな、と、 これも年のせいでしょうか。
オルガン、そしてオルガンを愛し関わられている牧師先生はじめ教会オルガニストの方々との交わりも嬉しかった 秋の演奏会でした。





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