川井市長の新春対談 : オルガニスト・井上圭子さん (2)


キューブのホール、オルガンは白石の誇り


川井…井上さんにはキューブの第1回のコンサートからやっていただいておりますが、ここのホールはどんな感じですか。

井上…これまで4回コンサートで弾かせていただき、オーケストラとも演奏しましたけど、その響きに出演者の皆さんも驚いてました。

大ホール、だいたい東京辺りの2千人収容できるようなホールになってしまうと、体で感じる音っていうのはより少なくなりますよね。でも、キューブの場合とてもぜいたくで、客席数の割には響きがあり、体で感じられます。私はここでCDを一枚録音させていただきましたが、レコーディングのスタッフたちも、ここのホールのオルガンの響きはこれまでにないものと、特別な一枚のアルバムができたと話をしておりました。そのぐらいとても個性的なもので、私はぜひこのホール、オルガンを白石のご自慢であり、誇りにしてほしいと思っています。

川井…生意気なことを言うようですけども、サントリーホールでオルガンを聴くよりもここで聴いた方がいいような気がするんですよ。

井上…オルガン自体のスケールも違うから迫力も違う。音色も違うし、ほかには無い素晴らしい楽器です。もちろん響きも建物にマッチしていまして、とてもダイナミックですね。ただ楽器が大きいから大変です。こういうスタイルの楽器はここに一つしかないから。東京で私たちが身近に触れる楽器にこういう楽器ないんですよ。そういう意味では難しいんですけども、とにかく貴重な存在であることには間違いありません。

川井…これはある意味では日本一のオルガンなんだ。

井上…スケールは一番大きいですよ。あとこういうスタイルの楽器は日本全国どこにもないですね。

川井…なおかつ音響的には、ホールとピタッと合っているいるということなんでしょうね。そうであれば、市の財産として大事にしていかなきゃないですね。

井上…東京にはたくさんオルガンありますけど、こういうオルガンはないものですから、白石に足を運ばれた方は、もっと東京の近くにこのホールを引っ張ってきたいと言っていますよ。

川井…例えば、軽井沢があれほど有名になりいっぱい人が来るというのは、東京から1時間で行けるからなんじゃないですかね。人口が非常に多いところの距離というのはある程度問題になりますよね。そういう意味で言うと、白石も東京から1時間以内ぐらいのところにあれば、いろんな方がまたおいでになるだろうとは思うんですが。

井上…でも、東京からも聴きに来られますよね。

川井…そうなんですね。

井上…まあ2時間ですし、大宮からだと1時間半、そうしますと聴きにこれる範囲内ですね。



演奏台も移動式で理想的



川井…独奏する場合にはステージの正面で、オーケストラでやる場合には端の方でやられますが。

井上…そうですね。キューブの演奏台は移動可能だから演奏しやすい場所に持っていけるんです。これは、このオルガンを設計された大林さんのコンサートホールのオルガンに対する強いポリシーの一つですね。

川井…ああ、そういうことなんですか。教会のオルガンなんかも背中向きで決まってますよね。

井上…大抵はモニターや鏡で指揮者を見て、背中向きで指揮者と演奏するんですね。でも、指揮者と背中向きっていうのは意思の疎通ができない、指揮者によってはいやがる。それはそうですよね、背中を向いた人に指揮棒振るのはとてもつらいものですよ。ただ白石の場合は独奏のときには正面で、それから指揮者を見るときには指揮者に合わせて、これは理想的ですね。

川井…そういう意味では動けるということは、指揮者を見やすいですね。

井上…そうです。あと見えるだけではなくて、大半の楽器がオルガン本体のところに演奏台ついていますよね。 そうすると近くのパイプの音ばかりが聞こえてきて、遠くのパイプが聞こえにくいんです。ステージの上だとほとんど客席と同じ音響状態で聴ける。それはとても弾きやすい、楽しめる、そういうメリットがある演奏台なんですよ。

川井…だいたいホールというのは、演奏者用じゃなくて聴衆のためにあるんでしょうから。

井上…それもそうです。あとオルガンもこういう移動式の演奏台がないところもあります。それは費用の問題であったり、オルガンの設計の問題であったりするんですけど。

川井…そうしますと井上さんとしては、ここは非常に弾きやすいんだ。

井上…とても弾きやすいですね。

川井…それから、キューブにブロンズ像が4つあるんですがご存じでしたか。あれを造ったのは中村晋也先生って言いまして、日本芸術院会員で鹿児島の先生なんですが、

どうもヨーロッパとの違いは、日本の設計家に彫刻の分かる人が少ないということだそうですよ。だってヨーロッパの建物には彫刻が必ずあるじゃないですか、日本はあまりないですよね。だから、いいホールに入って、彫刻を見て、いい音楽を聴く、そしてその合間にはホワイエで楽しむ。このへんが総合的に文化として高めていく方法かなあと思いますよ。

井上…ぜいたくなホールですね。

川井…ある意味ではぜいたくかもしれませんね。でも、21世紀は心の豊かさを求める時代ですし、その目的に添って後代に残るホールであってほしいと考えています。



国内一級のキューブのオルガンを弾ける若い人を育てたい


川井…キューブのオルガン、あるいはホールのことを大変お褒めいただいたんですが、しかし公共の施設として、高いレベルのホールをいかに市民が活用するか、これが大きな問題だと思うんですよ。そういう意味で、井上さんにお願いをしてオルガン教室を開いていただいているわけなんですが、今までオルガン教室を3回おやりになってどんなお感じですか。

井上…皆さん一生懸命ですよ。最近私は演奏活動が主となっていますが、オルガンはまだまだ客席から遠い存在ですよね。もっともっと聴衆に近づいていけばといつも考えているんですが、そういう気持ちを実現させてくれたものがこのオルガン教室なんです。ピアノやエレクトーンを弾く方で、一度オルガンを弾いてみたいという方が希望して受講なさっていらっしゃいますが、喜んで弾いている姿を見るのはとてもうれしいですね。


川井…芸術でもスポーツでもそうですが、小さい時からやらないと上達しないんだとよく言われますよね。井上さんはいくつからオルガンを−。最初ピアノをなさっていたとか。

井上…ピアノは4歳からです。好きこのんでやっていたわけではなかったんですが、オルガンを知った、巡り合ったのが中学3年生、そのときから音楽大好き、オルガン弾きたい、その一心でした。今ここのオルガン教室に中学3年生のお嬢さんいらっしゃるんですよ。オルガンって足、ペダルを使って弾くんですけど、彼女は今その足をつけることに一生懸命なんです。私もこのぐらいのときにオルガンを始めたので、ちょうど私の姿を見ているような感じがしています。ここの教室に期待することのひとつは、この白石から将来この立派なオルガンを弾く若い人が育っていくこと、楽器がありオルガニストが育っていったら、もっともっと素晴らしいなと思うんですよね。若い人たちに期待を込めております。


川井…今のところはまだ練習用のオルガンでやっておられるんでしょうが、いつごろからホールにあるオルガンで。

井上…次回から曲が仕上がった方にホールのオルガンで弾いていただきます。やっぱり突然ホールでと言っても楽器が大きく、戸惑われることが多いと思うので下準備をして。大きなスペースに音鳴らすわけですから、あまりたどたどしい姿でもいけないし、仕上がったらあそこで弾いていただく、それが目標になるのではないかと思いまして、「来月はホールで」って言ったらとても喜んでいました。間違った方法でホールのオルガンに触れば壊れることもありますけれども、レベルはどうであれ、ちゃんとした演奏の仕方で弾けば心配はいりません。かといって、誰でもどうぞというわけにはいかないんですが。


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