オルガニスト楽屋話

第109話  オルガンもセンス! ---2010.2.11.

寒い冬を迎えています、教会での練習、温度計を見たら4.5度でした。寒い〜。弾き始めるとオルガンから冷た〜い寒気が出てくるのです。 冷えた教会の中のあるオルガン、パイプの中にあった冷たい空気が外へ送り出されるのですね。 こうした日には、ドイツ時代、凍りつくような冷たい教会でオレンジジュースを飲みながら 練習したことを思い出します。練習を終え外へ出ると一面の雪だったこともありました。 でもオルガンは寒い地方、季節に似合う楽器だと思います。

川口リリアホールでの「プロムナード・コンサート」、すっかり地元に定着し、毎回多くの方に ご来場いただいています。先日も、若手演奏家の熱演に耳を傾け、大きな拍手を送ってくださる姿を、 客席に座った私は間近に見て、とっても幸せ〜な気分になりました(自分で演奏している時よりも)。 実際にステージに立ってしまうと、会場の様子、雰囲気はこんなに近くに見ること、わかることが出来ないですし、 私が好きで弾いてきたオルガンが、こんなに多くの人に喜んでいただける、人の心を豊かに出来る楽器になった のだと感無量でした。会場へ足を運んでくださる皆様に、そしていつも協力してくださっているスタッフに感謝です。

演奏者によって様々な個性があるのも面白いです。きらりと光るもの☆、人を惹きつけるもの、 必要です。それはステージに登場してきたところから始まります。音楽、そして「音」も 人の心に飛び込んでくる、メッセージを伝えられるようなセンスがなければなりません。 表現力があり、表情豊かで暖かい音、チャーミングな音を私は目指していますが、全てセンスですね。

演奏技術もですが、楽器との関わりでこうした表現や音楽が生まれてくるように思います。体の柔軟性も音質に現れるような 気がします。それから日常生活、見たもの、聞いたもの、感動、心の動き・・いろんなことが音楽に現れてくると。 つまり生活そのもののセンスが音楽のセンスにも現れると最近思います。

美しい自然、景色を見たり、芸術文化と接したり、美味しい食事をしたり、友達と会ったり、 こじつけかもしれませんが泳いだり鍛えたり(笑)、感覚そして体、全てが奏でられる「音」のセンスに繋がると思います。 ファッションとか美しいものへのこだわりも必要かな、と。これも個人的な趣味かもしれませんが。

さて来月は『オルガン世界夢紀行』の第2回目、オランダ、デンマーク、ドイツです。旅が好きな私は これまで長年の間にいろんな所をふらふら〜旅してきましたが、無駄ではなかったと。私の勉強してきたこと、 見てきたこと、経験したことの集大成のような企画になっています。あの時撮った写真があったはず、、 昔のアルバムや資料を探す、本棚、いや家までもひっくり返すような 騒ぎになっています。そして写真をスキャナーで読み込む作業。私が提案した企画なのですが、実は 大変なことになっています。

これは私が撮影した写真ですが、ブクステフーデが青年時代オルガニストをしていたデンマーク、ヘルシンゲアにある 聖マリア教会のオルガン(1641年)です。ブクステフーデはバッハが尊敬し模範とした作曲家で、バッハは ブクステフーデの演奏を聴くために、何日もかけて 馬車で旅した、という逸話があります。10年ほど前ですが、この地を訪れ、実際にブクステフーデが弾いてたというオルガンを間近に見て 感激したものです。オルガンを志し、勉強し、演奏活動をしてきた今の私だから出来る企画だと思い取り組んでいます。 私の音楽、そして個性やセンスもお聴きいただくことが出来れば幸いです。


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