Message from Keiko
オルガニスト楽屋話
第260話 川口リリアホール33年の軌跡、ありがとう! ---2024.2.28.
昨日は、大規模改修のために約2年間休館に入るリリアホールへ。ホール入り口には「33年間ありがとうございました。2年後にまた会いましょう!!」の垂れ幕が飾られ、
慣れ親しみ、お世話になったこの施設ともさよならなんだ、と少し寂しい気持ちに。
改修前、閉館前の催しで連日ホール使用が詰まっている中でしたが、午前中の3時間、オルガンを弾かせていただきました。改修前、最後のオルガンの使用とのことでした。
美しい響きのホールに設置されているクーン(スイス)のオルガン、これぞ私の気持ちが最も通じ合う理想のオルガンと確信しつつ、オルガンとの対話の時間は至福の時でした。
思い通りの音楽が奏でられる、私の気持ちに寄り添ってくれる、良く歌い、心地良く鳴ってくれる笛たち、何て素敵な楽器なんでしょう。
こんな素敵な楽器としばしのお別れの時、最後にどうしても弾きたいと思ったのは、セザール・フランクの「交響的大作」。30分にも及ぶこの曲は、
フランクの音楽の魅力が全て盛り込まれたような、まるでオーケストラ作品のような曲。ドイツ留学時代から温めていたこの曲ですが、演奏時間が30分ということもあり、
日本で演奏会に取り上げたのはたったの1回。
リリアのオルガンで奏でてみたい、やはり思った通り、リリアのオルガンは、柔らかく、重厚なリード管も備え、フランスロマン派にぴったり。フランクが楽譜に書き込んだ音色、音響効果が
再現出来、最高に素敵なフランクに。緩徐楽章ではその美しい響きに、涙しそう。大好きなオルガン、ありがとう!
オルガンはホール工事中は、埃が入らないよう養生され、リニューアルの完成を待ちます。
ホール内の客席、天井、耐震設備が配慮された新しいものに、またトイレなども広いスペースにリニューアルされるそうで、私は特に本番時、緊張した中、いつも使わせていただいた
楽屋にも懐かしい思いを寄せながら、思い出いっぱいのホール施設とも別れを告げてきました。
そして階下の1階では、「リリア33年の軌跡〜特別展〜」が開催されていて、スタッフの皆様にご案内いただきました。
33年前、まだ開発前の川口駅前、商業施設やマンションなど何もない所にホールが建設されました。そして川口市民のみならず多くの方に音楽芸術を提供し、ホールを中心に川口駅周辺も大きく発展しました。
まさに、何もなかった地に種が落ち、実を結びました。
特別展には33年前から現在まで、提供された演奏会、企画のチラシやポスターが展示され、出演した国内外の著名なアーティストのサインなど、今は亡き、小澤征爾さんや坂本龍一さんのサインも
あり、多くの素晴らしい公演、そして多くのお客様が楽しまれた公演の軌跡、まさに圧巻でした。
2300万人以上の方が来館されたと記されていましたが、ひとつひとつの催し、企画の発案に始まり、内容、出演者を決め、出演交渉、連絡、チラシやプログラムの作成、そして演奏会へ向けての告知、宣伝、演奏会当日の舞台裏、
企画制作に関わられた事業課スタッフの皆様のお働きは大変なものだったことと思います。展示を通して振り返りながら、数多くの世界的レベルで魅力溢れる、素晴らしい音楽を提供されたと痛感しました。
1990年7月、リリー(ユリ)の花を配り、華やかにオープン記念を祝った日のことも、忘れられませんが、開館当初から様々な企画の演奏会に出演させていただき、
またオルガン企画にも関わらせていただきました。33年前、まだ日本のホールのオルガン企画というものも駆け出しだった頃です、様々な新しい企画をご提案くださいました。小さき私に、
ソロコンサート、また国内外の素晴らしい共演者と演奏する多くの斬新で素晴らしい機会も与えてくださいました。
またシリーズ企画で「世界オルガン紀行」、そして長きに渡り開催された「リリア・パイプオルガン無料演奏会」、近年は「ワンコイン・オルガンコンサート」の企画監修にも関わらせていただきました。
特別展の会場にはオルガンが流れていました、私の演奏会の録音です((-_-;))、出演また関わらせていただいた演奏会の思い出が蘇ってきました。
毎年のように、オルガン+αの企画、初めて挑戦するものもあったし、
毎回全力投球で準備し、演奏したコンサート、懐かしさに浸りました。企画した会で、会場に座る私、満席のお客様に涙したこともありました。
会場を訪れた方々から、演奏会の思い出、2年後のオープンを楽しみにしているという多くのメッセージが寄せられていました。オルガン企画も定着したいま、
私も2年後に、またオルガンファンの皆様方と再会出来る日を待ち望みます。
33年間、オルガンはいつも良い状態で維持され、美しく奏で、多くの方に愛されたこと、また他の公共ホールにあるスタッフの移動がなく、開館当初から
変わらない情熱的で熱心なスタッフで企画され、守り続けてられてきたこと、33年の素晴らしい軌跡にブラボー!!ご尽力に感謝致します。 館は2年間閉館しますが、
1年後から予約、また企画も始まるそうで、リリアのこれまでに感謝しつつ、新しいスタートが今から楽しみに。昨晩は精神が高揚し、なかなか眠れない夜に。
こんな夜があってもいい、嬉しい余韻に浸った一日でした。
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