オルガニスト楽屋話

第116話  2つの演奏会を終えて ---2010.10.11.

秋の晩に、川口リリアホールでチェリスト古川展生さんとのデュオコンサート、そして 東京カテドラル・聖マリア大聖堂でオルガン・メディテーション、ホールと教会という2つの違った場所での演奏会が続きました。 会場にお出かけくださった皆様、どうもありがとうございました。

古川さんのチェロの音は美しく、またダイナミックで、ソリストばかりでなく オーケストラで首席奏者として演奏していらっしゃるだけに、アンサンブルに関して念入りに。作品を深く追求し 息遣いや呼吸をしっかり合わせるよう、前日には長い時間のリハーサルがもたれました。 音楽への姿勢♪、素晴らしかったですし、勉強になりました。 美しいチェロの音にもうっとり〜〜、心の歌ですね。表情豊かで、オルガンでは絶対不可能な響きを奏でてくれます。私も大好きで、 生まれかわったならば弾きたい楽器です。オルガンのぶきっちょな部分を補ってくれ、共に音楽し、アンサンブルしながらの 伴奏はとても楽しかったです。2つの楽器の魅力が惹き出されるようなコラボレーションは嬉しい機会であり、 機会を企画してくださったホールスタッフに感謝です。

そして東京カテドラルで久しぶりの演奏。カテドラルといえば、学生時代よく演奏会を聴きにかよったものです。そして大学院 卒業時には演奏の機会をいただき、演奏しました。今、思い出せば、デビュー・コンサート(?)でした。ここでの演奏が評論家の耳(目)にとまり、 アサヒグラフの写真つき2ページの記事に。その記事を見たTBSプロデューサーから『世界めぐり愛』(西ドイツ・パイプオルガン夢紀行)という番組のレポーター役を頼まれ、 初の30分TV番組出演。その番組を見た日本コロムビアのディレクターからCD録音のお話をいただいた・・こうした図式で全ては始まったのです。

7秒という長い残響、日本のどこにもないような恵まれた響きの教会です。 久しぶりにカテドラルへ。懐かしさにかられながら会堂へ入る私。丹下健三さん設計のかっこいい建物、年月が経ってもいまなお斬新ですね。 すると、目に付いたのが遠くに置かれているオブジェ。「ざくろ」だ。近くまで行き作者を見ると「小坂圭二」・・やっぱり! 私の目は正しかった!小坂先生、、青山学院中等部時代の美術の先生、美術を習った先生なのです。 ざくろ形の彫刻でわかったのです。父の同僚でもあったので、我が家へも時々いらしてた、、そして同じ「圭」だね、、と 可愛がってくださった先生でした。不思議。製作年は40年前、、つまり以前からここにあったのですが、気付かなかった私。 これも年のせいでしょうか、以前見えなかったものが見え、気付かなかったことに気付いたり。 すでに天に召されていますが、先生と再会できたような、また見守ってくださっているかのような嬉しい 気持ちに。こんな風にリハーサルは始まりました。

このカテドラルには学生時代、忘れられない思い出があります。先輩のアシスタントで夜遅くまでリハーサル。 帰り際に全ての電気を消灯、まっくらに。その後、帰りの出口を手探りで探しているうちに、 なぜか私たちは地下へ迷い込んでしまったのです。真っ暗闇の中にあったものは、お墓でした〜〜〜〜。きゃ〜〜〜。 自分達の声がまたその長い残響の中で響くこと〜。 二人でやっとの思いでお墓を通り抜け、外への出口を探し当て、脱出した覚えがあります。あの怖い〜〜思いは忘れられません。 今回は事務の方が受付に、そして昼間のリハーサルでしたが。

以前はロマンティックな音色の古いオルガンでしたが、2代目のオルガンは2004年に完成したマッショーニのオルガン。 イタリアの歴史ある名工のオルガンです。 繊細なタッチは表情豊かで、いつまでも弾いていたくなるような楽器です。でもさすがイタリア製〜、鍵盤が上がらなくなったり、 小さなトラブルですがいろいろと、本番前もペダル鍵盤に上がらない音が出て冷や汗ものでしたが、そこが イタリア製の魅了でもありますね、華奢なつくりでも壊れやすくてもイタリア製(私の場合、洋服や靴ですが、、そして オルガンも)魅力的でセンス良く、大好きです。

私のオルガン、私の音楽に耳を傾けてくださった皆様、お一人お一人に感謝です。いつもいらしてくださるファンの方々、 ありがとうございます。今回は30年ぶりに共に学んだ旧友とも再会、私の名前を覚えていてくださり会場へ来てくださったのです。 こうして昔の友人達と再会できることも私のお仕事の嬉しく幸せなことのひとつであり、暖かい会場の 方々に囲まれて、ホットな心になれた秋の晩でした。


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