オルガニスト楽屋話

第118話  クリスマス・ドイツ音楽ツアー(前編) ---2010.12.19.

川口リリアホールでのクリスマスコンサートは、ショパン生誕200年(2010年)と、リスト生誕200年(2011年)の年の狭間に、 ショパンとリストの名曲をピアニスト山岸ルツ子さんの演奏で、そして私のオルガンでバッハのクリスマスにふさわしい作品を 待誕(アドヴェント)から生誕(クリスマス)までストーリー性をもたしてお聴きいただきました。石井竜也さんの全国ツアーに一緒に出演した時からの 友人である山岸さん(るっちゃん)のピアノは、時には迫力がありダイナミック、そしてまた繊細で美しく、音の隅々まで 心の籠められた素晴らしい演奏で会場は魅了。そして最後には私たち二人のデュエットで、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」を。 会場で実際に音を出しながら私たちで編曲をし、珍しい2つの鍵盤楽器のデュエットが完成、私たちだけのオリジナル・バージョンで 音楽のクリスマスプレゼントをさせていただきました。彼女の美しいピアノに支えられての「アヴェ・マリア」のアンコールで私も夢心地に。 ステージ上にはクリスマスツリーが飾られ、光の演出もあり、ホールのスタッフの皆様にまた支えられて無事終了♪、 写真はコンサート後の私たち二人のショットです。るっちゃん、素敵な演奏をどうもありがとう!

コンサート疲れなどとは言ってはいられない、翌朝は早く起床し成田へ。クリスマス・ドイツ音楽ツアー の始まりです。こんな旅が出来たらという夢がこれから現実に。旅好きの私は自由きままな個人旅行は度重ねてはいるものの、 皆様をご案内するツアーとなると何かと訳が違う。『井上圭子さんと行くドイツ静謐のカペレと賑々のマルクト』と書かれた 名札が準備されていて、参加者の方々のスーツケースに、そして私の鞄にも付けられた。 果たして全てが上手く無事に進行するか、満足していただける旅になるかと ドキドキの中、この企画の発起人の方(ツアーのタイトルの命名者でもあります)とJTBの方から 「行ってらっしゃい〜!」と見送られ、添乗員さんに付き添われ私たちの旅はスタートしました。

午後6時、ミュンヘン空港に到着。迎えに来て下さった現地のガイドさんからまず「今年は100年来の寒さと言われています・・」と 聞かされた私達、寒いとは聞いてはいたがそこまで寒いとは、、ふ〜大変だ、覚悟を決め私達は外へ。確かに外気は冷たい。 日の暮れるのが早い冬のドイツはすでに真っ暗闇、そんな中、バスに揺られながら2時間、ザルツブルクに到着。 福井や白石からの参加者の方々にとっては、本当に長旅だったことでしょう。

ツアー中のお天気は概ね良好、お天気にはついていました。雪もぱらぱらと舞うのですが、時折、太陽も顔を出し、 車窓からは白銀の世界を楽しみました。 クリスマス前のドイツ(正確には2日間はオーストリアでしたが)、明るく喜びに満ちた季節、家々からは暖かい明かりが漏れ、 街ごとに統一された美しいイルミネーションに街は飾られ、それは日本のようにチカチカと点滅する明かりではなく、 落ち着いた暖かみのある光で、素朴でありながらお洒落です。灯りに舞う雪は、旅人の私達を楽しませてくれました。 お店のショーウィンドウ、またホテルやレストランも誰もが心温まるようなセンスの良い飾り付けがなされ、 可愛い飾りが置かれたり、クリスマスツリーが飾られたりで、そうしたお部屋の中は暖房がきき、また暖かみのある装飾のせいか、 零下という外の寒さも感じず過ごすことが出来ました。(右の写真はローテンブルク、ホテルの前で。朝です。)

各地のクリスマス・マーケットを訪ねたり、また教会を訪ねたり。大聖堂や教会に入ると、オルガンが鳴っていることも多く、 オルガンの響きを聴くことにも恵まれました。クリスマス前なので、オルガニストがコンサートやミサのために練習をしていたのでしょう。 ビュルツブルクのケッペレでは、歴史的なオルガンで私のミニ・コンサート。アドヴェントとクリスマスの曲をお聴きいただきました。 そしてオルガン工房を訪問、オルガンの製作の現場のみならず、オルガンの音の鳴る仕組みも説明してくださったのは、 オルガンを知っていただける良い機会になったと思います。 ザルツブルクは日曜日、折りしも第3アドヴェント。大聖堂のミサに参列。ガイドさんは入口まで来ると、ガイドの免許書をつけて(肩から提げていました) ミサには一緒に入れないと言うのです。 理由を尋ねると、ミサの時間は観光で入ってはいけない、お客様を案内するとガイドの資格を失う、ということでした。 「ここからは、先生お願いします」と。私が率い、モーツアルトがオルガニストをしていた教会へ。その日はコーラスと 金管アンサンブルの入った音楽ミサでした。


ドイツのお味も堪能しました。典型的なドイツ料理のほか、ジビエの季節でもあり、鹿や鴨も。 毎食ドイツ料理なので、胃も疲れた頃に、ガイドさんから中華や和食のご提案があっても、皆様 「ドイツ料理を」と。ドイツの味も気に入られたようでした。 また少人数で小さなバスでの移動だったので、大型バスでは入れないような道にある由緒ある伝統的なスタイルのホテルにも 宿泊することが出来ましたし、途中ルートを変更したり、追加していただいたり、小回りの利く旅でした。 私の趣味でお連れしたところもあるかと思いますが、 どこにもないスペシャル企画になったと思っています。(左の写真はザルツブルクでの昼食。右下の写真はビュルツブルクで。)




私の好きな国ドイツを紹介する旅でしたが、今回の旅で私自身もまたさらにドイツが好きになりました。 ドイツに一番似合う季節は冬ですね。 参加者の皆様もとても良い方ばかりで、一緒に旅をさせていただき幸せでした。協力いただきました場面もたくさん ありました、どうもありがとうございます。 いつも注意を払っていらした添乗員さん、また雪で凍結した道やアウトバーンも安全運転してくださったドライバーさん、 そしてガイドの方々、発起人さま、及びお手伝いくださった旅行会社の方々、ありがとうございました。 5日間ガイドしていただいたKazukoさん、とても熱心で知識豊富なガイドと説明は休む暇なく続き、 通訳のほかに各地で適切なアドヴァイス、とてもご親切にしていただき、 最後のミュンヘンでは別れを惜しみました。多くの方々に支えられての旅でした。 思い出もたくさん、そして私達の荷物も大きく持ちきれないほどに。

さて、昨日無事に帰国はしたのですが、実は帰りのフランクフルト空港で、大変なハプニングが。 空港には飛行機の出発時間の2時間半前に到着、余裕ある時間のはずでした。しかし出発ロビーに入ると人でいっぱい。歩くのも困難、経験もないような大混雑です。 どこのカウンターも長蛇の列。並ぶ人の列はどこまでも続く。そして列はぴったり止まったまま動かない。 前日の夜の大雪で、欠航になった便があり、乗れなかった人、チケットを買う人、キャンセルする人で大混乱状態だと。 確かに前の晩、私たちが最後の食事を楽しんでいる時、窓の外は大雪でした。でも今朝は快晴。 道路の雪の心配はしたものの、まさか空港がこんなパニックになっているとは。 この列を並んでいたら、飛行機には間に合わない。現地のガイドさんも慌て、機械の自動チェクイン機でとりあえず航空券をゲット。 あとはスーツケースをどうするか、どこかで出せないものか、ということになり、 私のANAのゴールドカードでファーストクラスのチェクイン・カウンター(毎週大阪がよいで荷物だけは いつもファーストクラス扱いに)から皆の荷物を出せないか交渉に走った私たち。 しかし、そこも長蛇の列、交渉の余地もなし。添乗員さんからのアドヴァイスで、スーツケースを持って中に入り、搭乗口で 荷物を預けることになった。パスポート審査の所へ案内されると、「国境ですから、私はここからは入れません」とガイドさん。 我々だけになった。大きな荷物を持ったまま、急ぎ足で長い通路を搭乗口へと。免税品店も、それから税金の払い戻しも全て放棄。 とにかく飛行機に乗らないと。外用に着込んでいたので暑い〜。

セキュリティ・チェックの所まで来た。「これは手荷物ではありません!!絶対に持っては入れません!!!」「どうやってここまで 入ってきたのですか?!」「どうしてもダメです」・・・強い口調のドイツ語に私もドイツ調で「時間がないのです、飛行機に乗れなくなります!!」 「下の大混乱は知っているのですか?!!」。。。。「上司に聞かなくてはわかりません」。 こうしたやりとりの後、ようやく手荷物をとして通してもらえることになった、やれやれ。しかし、、「手荷物なので水もの、ボトル、は全部出してください」。 そして荷物の隅々まで機械に通され検査され、開けられた。ワインが入っている〜〜困った。そしてチーズと(チーズは問題ないけれど) こっそりしのばせた○○、これは間違いなく没収されるだろう。仕方ない、飛行機に乗ることが先決だ。もし乗れなかったら大変なことになる。 ここまで持って来たワインは捨てられることに。化粧品類はOKだった、日本出国時とサイズの規定が違うようだ、助かった。そして ○○には気付かれずに、、、。そして搭乗口で再度交渉。「規則」に煩いドイツを何とか出国できた。搭乗口に一緒に着いた方々に聞くと我々より 2時間前からカウンターにいた人たち、体は乗れたが荷物は後の飛行機、という乗客も。乗り遅れた人もいたようだ。

こんなハプニングもあってのツアーでしたが、 ドイツ各地での思い出話、まだまだあります。また写真もあります。少しずつ<メッセージ>や写真のページで更新したいと思っています。


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