オルガニスト楽屋話

第119話  クリスマス・ドイツ音楽ツアー(後編) ---2010.12.30.

クリスマス、いかがお過ごしでしたでしょうか。 ドイツでは12月24日のクリスマス・イヴは、家で手作りのお料理を食べながら、家族と一緒に静かに過ごします。 25日は親戚で集まり、子供たちはプレゼントを開け、家族の休日、日本のお正月でしょうか。 私も留学時代の1年間はロータリアンでお医者様のご家庭に、そして2年間は学生寮に住んでいましたが、 クリスマスが近づくと、どんどん寮の部屋に点く明かりがなくなり、24日は大きな寮、家に帰らないのは 私ともう一人のたった二人で心細くなった思い出もあります。そんなドイツのクリスマスですが、 家ではお菓子を焼いたり(シュトーレンという甘いフルーツケーキ)、家族へのプレゼントを用意したり、 人々は心躍らせ嬉しい季節、街は買い物客で賑わいます。

街の中心にある広場にはクリスマスの市(ドイツ語ではWeihnachtsmarkt)、 クリスマス・マーケットが開かれます。中世から長い歴史があり、最初は物々交換の場、 そのうちいらない物を、あるいは、地元の特産品や民芸品を売るようになり、そして今のようなク リスマス・マーケットになったそうです。クリスマスツリーに飾る可愛いオーナメント、木製のおもちゃ、 蝋燭、レープクーヘンや果物を串刺しにしチョコレートを巻いたお菓子などが売られています。 グリューワイン(ホットワイン)を飲んで温まりながら、甘い〜香りの漂う中、 人々は散策しお買い物を楽しみます。沢山の露店が並ぶのですが、その中には樅の木屋さん、、クリスマスツリー用の樅の木を 小さな木から大きな木まで並べて売っているお店もありました。余談ですが、ツリー用の樅の木の畑も車窓から見ました。 クリスマスツリーがぞろりと並んでいました。(左の写真はローテンブルク市庁舎前、美しい イルミネーションで飾られたクリスマスツリー)

街は美しいイルミネーションで飾られます。街毎にデザインと色は統一され、シンプルながらも 綺麗でお洒落。また家々にも灯り、窓辺も緑や赤のオーナメントで、またショーウインドウもセンスよく飾られ、 暗い時間が長く寒いドイツですが、街行く人も心温まります。

レストランにもクリスマスツリーが飾られたり、お洒落なクリスマスのテーブルセッティングがほどこされ、 蝋燭の光で暖かい雰囲気の中、 私たちは各地の地元のワインを飲みながら、ゆっくりお食事を楽しみました。 こじんまりしたツアーだから出来ることだったかもしれません。

雪のないクリスマスになるか、あるいはホワイトクリスマスになるか、雪のないことも多いそうですが、 今年はホワイトクリスマス。時折雪がぱらぱら舞い、車窓からは白銀の雪景色、クリスマスの旅としては 雰囲気もアップ。ドイツは「規則の国」、家の色もパステルカラーと決められているそう。 淡いピンク、イエロー、ブルー、、、綺麗で整った街並みに雪が積もり、メルヘン、おとぎの国のよう。 (右の写真はフライブルクの商店街)

団体旅行ですが小さなグループで、それに日本から添乗員さん、そして現地でガイドさん、ドライバーさんがつくと いう贅沢な旅でした。「旗」なしで動けたのも私の好みであり(笑)、また現地での状況や私達の希望に あわせてスケジュールの微調整も出来、またわがままも聞いていただけ、団体旅行でありながら小回りの きいた旅でした。

クリスマス・マーケットではブラスバンドの演奏でクリスマスの音楽、教会に入ると荘厳なオルガンの響き、 ミサの時間に美しいコーラスとブラスの演奏、、など音楽との遭遇もありました。

ドイツのアウトバーン、速いですね〜。特別な事情のない限り、制限速度はないというのですから。 時速130キロが経済的であり、また公害を出しにくい奨励速度だと、、びゅんびゅんと気持ち良さそ〜うに走る ドイツ車たち。ドイツ車はアウトバーンを走る車ですね、つくづくそう思いました。それでもミュンヘン市内で工事があり、 渋滞に巻き込まれることに。時間がなくなり、その日の昼食はアウトバーンのインビス(軽食屋さん)でソーセージとパンに。

ザルツブルクでの昼食、フェルトザラート(Feldsalat)、緑の小さな葉っぱでサラダとして生で食べますが、これが美味しい、、 日本では食べられないし、わあ、久しぶり〜。そしてデザートに出てきたザルツブルガーノッケル、メレンゲのお菓子で この地の名物だそうですがその大きさにはびっくり。

ザルツブルクのカフェで飲んだ、ハイセショコラーデ(ホットココア)も美味しく、懐かしかった。 ミュンヘンではビアホールへ、Weissewurst(白ソーセージ)と共に、Weizenbier(淡い色のビール)・・ 共にも南ドイツのお味・・。ヴュルツブルクではワイン醸造所のレストランで、フランケンワインをいただいたり、、 思い出と共に、お腹にもいっぱい思い出を。 こんな感じで、私の好みのお味を皆様にお勧めしたり、私の好きな場所へお連れしたり、、 そんな旅になってしまったかもしれません。

フライブルクは私が3年間住んでいた街、懐かしいし思い出いっぱいの街。まずはミュンスター(大聖堂)に皆様を案内、 街を散策しながら見かけたシュバルツバルト・キルシュ・トルテ(Schwalzwaldkirschtorte)黒い森シュバルツバルトに位置する フライブルクのケーキ、、さくらんぼとお酒のきいたチョコレートケーキ。「これ美味しいです〜」と思わず、、 食べること大好きな私。その日のランチの時に皆様から「デザートにあのケーキをいただきましょう」と。 「あのケーキならば、ケーキ屋さんの方が・・」と、折角ならば美味しいお店をお勧め。そして夕方、皆でカフェに行き、ふ わふわの生クリームの添えられたトルテをいただくことに。その日の晩は、ミュンスター広場(大聖堂の前の広場)に あるレストランでゆっくり夕食を。恩師サットマリーご夫妻も街までいらしてくださり、ご一緒に食事の時を。 (皆様へのプレゼントのCDにサインをするサットマリー先生と愛さん。)

20代の時、私はNHKホールで聴いたサットマリー先生の演奏に惹かれ、どうしてもフライブルクで勉強したいという思いに駆られた。 不安いっぱいでこの地に着いた、初めてのヨーロッパだった。それは私一人の小さな夢だった。 その後、ひとつずつの小さな夢が叶えられていき、ただただ無心に夢中になって走った。

私の「夢」として始まったことが、いまこうして皆様をお連れしての旅にまで 発展するとは、こんな日が訪れるとは夢にも思わなかった。嬉しかった。オルガニストである私が勉学、 仕事、趣味を通して、これまで経験したこと、見たこと、聞いたことが生かされ凝縮し、実現した旅となった。 どこにもないようなスペシャル・ツアーに、私としても忘れられない、思い出深い旅に。 至らぬ点も多々あったかと思いますが、いつも笑顔の参加者の皆様、ありがとうございました。

今年もあと僅かになりましたが、振り返れば2010年は川口リリアホールでの『世界オルガン夢紀行』シリーズ、そ して年末の現実の旅企画、、「旅」をテーマに、充実した1年でした。コンサートにお出かけくださいました皆様、 ツアーにご参加くださいました皆様、サイトをお訪ねくださいました皆様、ありがとうございました。 来年も今の私が出来ること、今の私だから出来ること、を精一杯☆進めていきたいと思っています。 どうぞよろしくお願い致します。皆様方にとっても明るく輝かしい2011年をお祈りしています。


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