オルガニスト楽屋話

第124話  『世界オルガン夢紀行』〜フランス、ベルギー編 ---2011.6.5.

『世界オルガン夢紀行』・・このタイトル、私の中でもしっくりと定着するものになってきました。 長い歴史の中で、世界各地の違った風土や土壌で生まれてきたオルガン、時代や地方により特色があります。 また装飾がほどこされ外見的にも美しいオルガン、私は“音楽を奏でる美術品、芸術作品”といつも言っていますが、 「映像と音楽で世界旅」、日本初のこの試み、 他の楽器にはないオルガンならではの特色、特徴を生かした企画だと思っています。

第4回目の『夢紀行』のリハーサルが始まり、リハーサル、本番と3日間の川口がよい。 リハーサル初日、リリアホールのクーン・オルガンとは、久しぶりの友と会う感じ。 普段練習していた小さな練習楽器から響きの良いホールへ、音楽のイメージは膨らむ。 念入りな音色作り、そして響き、楽器に合った演奏を模索していく。 それは音楽を創る創作活動。新しい音楽を見つけたり、気付いたり、 何度も弾いている曲でも毎回発見がある。コンサートに向け、作品が膨らんでいく、 出来上がっていく、その過程が楽しい。

今回のフランス編では、カヴァイエ=コルなどの名器があり(上の写真)、それを演奏するオルガニストが作曲家であり、 楽器を生かした作品が生まれた・・この構図が顕著にみられました。私自身も当時の楽器の音をイメージし、 作品への解釈を深めていくことが出来ました。楽器があり、楽器からインスピレーションを受けた作曲家が作品を残し、 そして演奏家の私達が存在する。歴史上の流れを感じながら。

私達オルガニストにとっても、楽器との出会い、また多くの様々なオルガンを弾くことはとても重要で、 それぞれの楽器、ストップ(笛)、に合った演奏があり、弾くことにより自然に演奏法を習得していきます。 美しい楽器からは多くを学び、またドイツの楽器、フランスの楽器、教会の楽器から大きなホールの楽器まで、 様々な様式、規模のオルガンを弾く機会が私を成長させてくれています。

毎回の企画でのお話は、専門的な知識を基に初めてオルガンに接する方にもわかるようなお話に、 難しい専門書を読むようなお話ではなく、自分の言葉で伝えられるよう心がけています。 日本人からは最も縁遠い楽器、オルガンを身近に感じていただくために。 800名収容の川口リリア音楽ホールのスペースはこの企画にぴったりの規模であり、 無料で皆様方に聴いていただけること、JR駅前という便利な立地条件もありがたく、 またホールのスタッフの方々の熱意と細やかな配慮にいつも感謝です。

今回、3時の会が終わり、ほっと一息。一日に午後3時と7時の2公演というのは、同じことを2回、、 と簡単に考えがちですが、瞬間芸術、機械のようには動かない私(達)には、そう簡単でもないのです。
7時の会も集中しないと、、と思っているところへ、ホールのスタッフが飛んできた、 「鳥の写真ですが、あれは“うぐいす”ではなく“めじろ”だそうです」。「?!!〜〜」(私)。会場にいらしたお客様からご指摘があったと。 今回演奏した現代フランス音楽を代表する作曲家、オリヴィエ・メシアンの『鳥の歌』。 メシアンは鳥類学者でもあり、森に行き鳥の声を聞いては採譜し音楽にしたのです。 この曲に出てくる、また譜面にも書かれている鳥、つぐみ、うぐいす、こまどりの 写真4枚をサイトで見つけパワーポイントに入れてあったのですが、 そのうちの1枚の写真が違っているというのです。目の周りが白いからメジロだと、、。確かに。 鳥に詳しい方はすぐにわかってご指摘くださったのですね、さて、どうしよう〜〜、7時の会まで2時間余り、困った、、。

パソコンに精通したホールスタッフが、「写真を探してきます!」と。「申し訳ない、でも間に合いますか??」 と不安げな私。ホール事務室で鳥の写真を探してくださり、迅速に可愛いうぐいすの写真に替えてくださいました。 何ともありがたい、感謝!今回もスタッフ、お客様に支えられ、無事終えることが出来ました。

今回はフランス、ベルギー編。音楽はフランス古典から現代作品まで、大きな流れを。 ベルギーは数年前の写真がPCにも入っていたのですが、フランスは10年ほど前のこと。 本棚奥深くに眠っていたアルバム数冊を引っ張り出し、写真を探す作業、いつものように部屋の中は混乱状態に。 思い出の写真とも遭遇、懐かしい〜、でも作業を中断している時間などはない!と進める私。 次回は東欧へ、チェコ、ポーランド、ハンガリーです。たまたま、夏にポーランドで演奏会があるので、 帰りにチェコに寄ることに。新しい写真もお見せ出来ると思います。

5月31日は半年分の印税が支払われる日。NHKから出版された「名曲アルバム」のDVDやCD、 そしてレコード会社コロムビアからの印税です。いただく通知により、あ〜こんなに使われている、 以前に録音した音源が多種多様なCDになって再販されていることも知るのです。 「小学校、行事・放送用音楽」「小学校音楽科教科書教材」、「聖なるメロディー」、 「ウェディング・クラシクス」、「ママと小さな天使へ」、「おはよう、クラシック」、・・・ そして、最近は「マイ・ラスト・クラシック」。何かと思ったら、人生の最後に流れて欲しい音楽、 葬儀の時に流して欲しい音楽、、、だそうだ、幅広い。

梅雨の季節、鍵盤とパイプを結んでいるのは木の薄い板(トラッカー)です。 じめじめと湿度が上がると、鍵盤の感触も何となくぬかぬかと。いつものようにすっきりとした 感触でなくなり、楽器からも湿度を感じますが、また皆様のお聴きいただく演奏会の準備に精進を続ける日々です。


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