オルガニスト楽屋話

第13話 すみだトリフォニーホールの新しいオルガンによせて ---1997.11.4.

東京墨田区に、また新しくオルガンの設置されたホールが完成、 今週はその開館記念公演の中でのオルガンお披露目コンサート・・私も 出演させていただきます。 錦糸町駅前の総合開発とともに、音楽による街づくりを提唱し、東京東部に 初めての2000名収容の音楽専用ホールの完成です。

夏以来、私は、この楽器と過ごす時間が多くなりました。このホールの専属オルガニ ストという仕事が与えられたからです。9月末、すでにこのホールでCDを 録音・・これは開館記念式典の際の記念品となりました(非売品です)。

誰もいないホールで大きなオルガンに触れ、楽器から、また響きの中から、 色々なインスピレーションが沸き、発見があります。 それは、これまででしたら、演奏会当日、あるいはその前のリハーサルの時に 初めてわかるようなこと。あるいは、こんな風に響くのではないかと想像のうちにし か考えられなかったものなのです。 何とも恵まれた環境が与えられ、この楽器によって、私も成長させてもらえる ような気がします。

オルガンは、ドレスデンの Jehmlichが製作した 3段鍵盤、66ストップの楽器です。 私はその選定には参加していませんが、これまでの日本にあるドイツの オルガンと比較しますと、音は柔らかく、耳に優しいです。その分、迫力には 欠けるかもしれませんが、幅広いレパートリーに対応出来る楽器です。 とても演奏しやすく、今のところ、大きなトラブルは起こっていません。

ただ、オーケストラとの共演にふさわしい楽器と言われているにもかかわらず、 ステージの上に演奏台が無いこと、またバルコニーが狭く、他の楽器との 共演が難しいのは、残念なことです。

<トリフォニー>とは、聴衆、アーチスト、ホールが一体となるとの 意だそうです。こんな願いの中、お披露目のコンサートを迎えようとして います。

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