オルガニスト楽屋話

第137話  宝塚教会での演奏会 ---2012.2.9.

ヨハン・セバスティアン・バッハ・・・皆様もご存知の「大バッハ」は大変優れた音楽家でしたが、 生涯信仰深く、敬虔なクリスチャンでした。神様、教会のために音楽を捧げ、神様との繋がりの中でバッハの音楽は生まれました。
ライプチッヒの聖トマス教会でカントール(聖歌隊指揮者とオルガニスト)の仕事をしていた晩年27年間は、 毎週日曜礼拝のために、その日の教会暦にふさわしいカンタータを書き、ソリスト、オーケストラとコーラスとリハーサルをし、 日曜日にはオルガンを弾きながら指揮をし、演奏したというのですから、どんなに大変だったことかと想像します。 しかしながら神様に自分の能力の全てを捧げられる日々に満足し、大きな喜びを感じていたというバッハ。 バッハの音楽の素晴らしさのみならず、敬虔な信仰心を持った教会音楽家バッハ像について知れば知るほど、尊敬すべき素晴らしい人物だと痛感するのです。

宝塚教会での演奏会、教会での演奏会なので是非ともこうしたバッハ像に迫る企画、演奏とお話のプログラムを考えました。 演奏会3時間前、オルガンに向かって右側にスクリーンを置き、プロジェクターと私のPCの場所、私の立ち位置を決め、 お花を飾り、設営もばっちり、リハーサルも終了。さて開場しお客様を迎える時間まであと5分、、、 最後にオルガン演奏台の確認に礼拝堂に入ると、礼拝堂内の左側の窓から、午後の明るい太陽の光が斜めにサンサンと差し込んでいる。 スクリーンにしっかり当たっている〜。これでは見えない!、牧師先生のご配慮で、右側に設置されたスクリーンを慌てて左側へ大移動〜、 モニターの設置の変更にも大慌て〜。明るい礼拝堂で開場直前のハプニングでした。

宝塚教会のJaeger & Brommerオルガンは、規模は小さいものの、豊かに歌う楽器です。フルートも美しかったけれど、 とりわけSalicional(←という名前のストップ=笛)が美しくお気に入りでした。切望されこの会堂に設置されたオルガンと伺いましたが、 この楽器を望まれ、愛し、そして大切にされている皆様のお気持ちがオルガンにも伝わっていました。 暖かいお心をいっぱい感じながら私もオルガンと対話してのリハーサル。オルガンはより一層どんどん豊かに響くように。 拍手に迎えられ満席の会場に。心を籠めて演奏させていただきました。さぞかし音は吸われてしまうだろうと思いきや、 変わらず豊かに歌ってくれたオルガンでした。和やかな雰囲気の中、演奏に集中することが出来、オルガンと私がひとつになることが出来、 心地よかったこと。私の演奏とお話に耳を傾けてくださった皆様、どうもありがとうございました。 またコンサートのためにご尽力くださいました牧師先生、オルガン委員の皆様、ありがとうございます。 お心の籠ったお手作りのお料理、お食事会などの暖かい歓迎にも感激と感謝でした。オルガンを囲む皆様との交わり、 忘れられない思い出が出来た宝塚ステイでした。

リハーサルの合間にあった大学での期末の実技試験。右足〜、左足〜と初歩から教えた学生も、 立派な演奏を聴かせてくれるまでに。若くてやる気と能力がある学生の成長は早く、講堂に響くオルガンの音に身を包まれた私は、 ハラハラする瞬間もあったものの、幸せ気分と達成感に満たされたのでした。音楽に点数をつけるのは難しい、 1年頑張った努力賞の点数をみなにつけた私でした。

そして雪山へ。樹木に積もった雪は美しい、まるで自然の芸術作品のよう。前夜から雪が降った朝、リフト一番乗りで、 ふわふわの誰も入っていないパウダースノーのゲレンデにシュプール。 ゲレンデにスピード違反しても取り締まりがないのは嬉しい。私は雪山に舞った。 緊張した日々の後、雪、真っ白な白銀の世界は私を癒してくれるのでした。 それにしても幼い頃身につけたものは、体が覚えているものですね。子供の頃、厳しいピアノの先生からはスキーに行くなんて、、 と母と私、二人で叱られたこともあったけれども、いろいろなことを習わせてくれた両親でした。
ホテルの宿泊客の半数は外国人、その多くはオーストラリアからリゾートで訪れているお客様。聞こえてくるのは英語、 フランス語、ロシア語も。日本の山、温泉、露天風呂、日本食、、日本の自然と文化をエンジョイしている彼らを見るのも好きで、 インターナショナルな白馬の和田の森にかよい始めて5年に。 確かに日本のアルプス、白銀の山の美しい表情には世界に誇れるような“美”があります。オルガンと雪を楽しんだ1週間でした。


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