オルガニスト楽屋話

第147話  北ドイツへ向かう ---2012.9.11.

ポーランドのカトヴィッチェから10時間半、のどかな田園風景を眺め、演奏会の余韻に浸りながら、のんびり列車の旅、 ハンブルクに到着。留学時代を過ごしたフライブルクが南ドイツということもあり、その後ドイツの南の地方を訪ねることが多く、 久しぶりの北ドイツ。

北ドイツ、オランダ・・この地方は歴史的な名器の宝庫です。演奏会後の旅ではそうしたバロック・オルガンを訪ねてきました。 バッハやブクステフーデが過ごした街や教会に我が身を置き、時代を超え響くオルガンの響きに触れる・・ 感慨深い時を過ごすことが出来ました。

ハンブルクのヤコビ教会、長いこと訪ねたい教会でした。遠くから教会の塔は見えていたのに、 いざ近づくとビルの陰でわからなくなってしまう都会の教会。教会内に入ると静けさが漂い、 シュニットガーが1512年に完成させた4段鍵盤の大きなオルガンが鎮座していました。 シュニットガーとはオルガン製作家で、バッハはじめラインケン、リューベック、 ブクステフーデやベームと言ったバロック時代の作曲家達が活躍した時代に、 ハンブルク周辺に素晴らしいオルガンを残しています。
明るく鋭い響きのプレノ、ペダルの大きなリード管はよく鳴り力強い。それでいて繊細で良く歌うフルート・ストップ。 バッハもシュニットガーなど素晴らしいオルガンを聴くために、ハンブルクを訪れたそうですが、その美しさに酔いしれました。

ハンブルクから列車で通常ならば50分、遅延し1時間半かかりましたが、途中、「ブクステフーデ」という駅を通り、 シュターデという街へ。

歩いて1時間もあれば一周出来るようなこの小さな街に、素晴らしい歴史的なバロック・オルガンが2台あることには驚きます。 ひとつはSt. Wilhadi 教会にあるBielfeldtオルガン(1736年)、入口で分厚いオルガンの専門書を買い(ほとんど売れたことがない様子でした、、) オルガニストだと話すと、 親切にも鍵を開けて演奏台へ案内してくれたおばさま。もうひとつはSt. Cosmae教会の シュニットガー(1675年)、ここでは オルガニストが練習をしていて聴くことが出来ました。

南ドイツの装飾いっぱいのカトリック教会やカテドラルとは趣が違い、北ドイツのプロテスタント教会は すっきりとしていて明るい光の射す教会が多く、そこには南ドイツのオルガンとは違った特色を持つ素晴らしいバロック 時代の名器があります。その明るく輝かしい響き、またオルガンケースの美しさにも息を呑むことばかりでした。
オルガンが目的で訪ねた街でしたが、何とチャーミングで可愛い街だこと!!散策をし、テラスでランチをし、 楽しいシュターデでの一日でした。

さて、ポーランド滞在時にFacebookの「友達」であるロシア人のVeraさんがハンブルクに滞在していることが判明。 来年開催されるTariverdievコンクールの主催者であり、作曲家Tariverdievs氏夫人であるVeraさんにFacebookで連絡をとってみると、 私が到着する前日にニースへ向かうと言う。残念ながら会う事は出来なかったのですが、私の泊まるホテルに資料と伝言を 残してくださり、Facebookのお陰でした。世界は狭い。

ハンブルク、最後の日は自転車を借りることに。確かにU-Bahn(地下鉄)やS-Bahn(市内電車)に乗るよりも速いし、 自転車ごと電車に乗ることも出来ます。自転車道路が整備された道路は、歩行者と自転車が走るレーンがはっきり区別され、 お互いにとって快適であり安全。日本もこの自転車専用道路がもっと普及することを提案したいです。
しかしながらドイツの自転車、ペダルが後ろに回らない(ブレーキになる)。走り出しが難しく、始めは転びそうに、、 コツが必要。しかし慣れるとサドルもこぎ易く、スピードも出る。ハンブルクの街に隣接する外アルスター湖を1周し、 郊外のギャラリーに寄ったり、おしゃれなカフェに寄ったり、自由自在に動けたレンタル自転車でした。

帰国し、再びオルガンを弾く。新鮮な感覚〜♪!!残響の長いカテドラルでの演奏、北ドイツのオルガンの響き、 しばしドイツ語を話し違った環境で過ごした時間、、、今回の旅の大きな収穫だと痛感するのでした。

ドイツの写真も合わせてご覧ください。)







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