オルガニスト楽屋話

第153話 甲府のワイナリーにオルガン誕生 ---2012.11.20.

山梨県甲斐市に完成した「Kingswell」(キングスウェル) を昨日訪問させていただきました。計画当初から、甲府のワイナリーの オーナーの方が、大きな庭園をつくり、その中にホールを建て、そこにオルガンも設置される、、という夢のようなお話を聞いていました。 完成したことを知り、是非お訪ねしたいと思っていたのですが、よくやく昨日、同じマンションに住むオルガニストのお友達に誘っていただき、 実現しました。

中央高速に乗りしばらく走ると、紅葉真っ盛りの美しい山々。約1時間程の快適ドライブで、双葉サービスエリアへ。 珍しいことにサービスエリアに高速出口があるのです。ETCであれば出入り可能という小さな出口を出て、 約5分もしないうちに、Kingswellに到着。広い駐車場に車を止め、素敵な門をくぐると、 なだらかなスロープでエントランスへと導かれます(左の写真)。異国情緒、まあ何て素敵な所!と喜ぶ私。

渋滞もなく、約束の時間である午後3時より少し早く着いたので、まずはEnglish Garden英国式庭園を拝見 させていただくことに。イギリス人のガーデンデザイナーによって設計された庭園で、バラの花が咲き乱れ、 樹木は綺麗に紅葉し、小さな噴水があり、せせらぎが流れ、池には大きな鯉が泳ぎ、センスの良いオブジェやガーデン・チェアが 散りばめられています。バラの花の香りが漂う中、手入れの行き届いた庭園を散策させていただきました。リフレッシュ!




その後、ホールへと案内していただきました。左の写真がホールのエントランスです。ホールは200名収用だそうですが、 天井は高く、木の温もりを感じます。移動可能な椅子は、様々な用途に有効に利用出来るよう考えられたのでしょう。 その正面には、日本では見られないような、淡いブルーに金色の奏直が施された、大変美しいケースのオルガンが鎮座していました。




オルガンは、イタリアの名オルガニストでありバロック・アンサンブルを指揮したりで有名な アンドレア・マルコン氏の監修で、イタリアのオルガン製作家Zanin(ザニン)によって製作された、1段鍵盤とペダルで 12ストップの楽器です。 ライプチヒ郊外のRoehta(レータ村)にあるジルバーマン・オルガンのコピーだそうです。ジルバーマンとはバロック時代、 丁度バッハの時代に名器を残したオルガン製作家ですが、家に帰ってから調べてみると、レータには2台のジルバーマン・オルガンがあり、 こちらはMarienkirche(マリア教会)にある 1722年に製作されたオリジナルは9ストップのオルガンのコピーということがわかりました。




豊かに歌うプリンチパル、暖かいフルート、プレノの響きも充実し、唯一のリード管であるペダルのポザウネは強くも弱くもなく、 見事に手鍵盤のプレノに調和していました。タッチ は繊細で心地よく反応してくれます。12ストップならば2段鍵盤にと要求してしまいがちなところを、 1段鍵盤にした、その贅沢な意味が弾いているうちによく理解出来ました。個々のストップはそれぞれ性格と魅力を兼ね備えており、 1段鍵盤=小さなオルガンという印象は一気に吹き消されました。響きの良いホールに、日本のどこにもないような様式の、素晴らしいオルガンが誕生したことを、 心よりお祝いします!!

折しも、数週間前にドレスデンでジルバーマン・オルガンを聴いてきたばかり。車で2時間程の所でジルバーマンの響きを 聴けるなんて、、何て素敵でしょう。ブクステフーデ、シャイデマン、バッハ、、などの作品達が、生き生きと響く。 楽器から教えられること沢山、ずっと弾いていたいオルガンでした。




2時間たっぷり弾かせていただいた後、オーナーの山寺一雄様にKingswell内をご案内いただきました。 どこへいらっしゃるのかと思ったら、まずは外へ、、可愛いポニーが2頭いました〜。その餌やりに。

そしてステンドグラスが美しいお部屋などへもご案内くださいました。イギリスで買い付けされたというアンティックの 家具調度品やシャンデリア、まるで迎賓館のよう。地下には1年中12度に保たれたワインセラー、その広さとワインの数にも驚きました。 山梨のワインだけでなく、フランス、ドイツなど世界各地の高価なワインが所狭しと置かれていました。




そして同じくKingswell内にイタリアン・レストランもあるのですからびっくり。 イタリアン・レストラン「カンパーナ」で、フルコース・ディナーを。 自家農園で栽培された新鮮なお野菜、果物、吟味された珍しい食材を取り寄せての本格的なイタリアン。 前菜は真鯛のマリネ、自家農園のにんじんスープ、メインは魚のグリル、そして珍しく貴重なトスカーナ産の豚肉“チンタセネーゼ”のソテー をご馳走になりました。野菜の付け合せもとても美味しかったです。そしてチーズの盛り合わせ、デザートは専属パティシエ(素敵な方でした) が作ってくださったメレンゲとキャラメルジェラート。日が暮れてきて、ライトアップされた 美しい庭園を見ながら、天井が高く贅沢で静かな空間で、オーナーの山寺様にいろいろお話を伺いながら美味しいお食事、 最高に贅沢な時間を過ごさせていただきました。
ワイン-オルガン-イタリア料理・・・最高な取り合わせです☆☆☆ 世界中、どこにもないでしょう〜!!

残念ながら帰りの運転があったので、私はワインをいただけませんでしたが、美しいオルガンの響きと、 ものすごい発想、大きな夢を実現された素晴らしいお話に酔いしれた一日となりました。 またぜひお訪ねしたい所です。






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