オルガニスト楽屋話

第168話  スイスの山での田舎生活 ---2013.8.30.

8月18日に日本を発ち、スイス南西部のヴァレー州、イタリア国境にも近く、切り立った岩山や氷河のあるアルプスに 囲まれたエルネンという村へ。“Musikdorf(音楽の村)”と呼ばれるこの美しい村で、毎年夏に恩師サットマリー先生の講習会が開催されていて、 今回は35回目、私は30年振りに今回はお弟子さん方を連れて参加。チューリッヒから3時間半、懐かしさ一杯でこの村へ向かいました。

聞こえてくるのはカウベルの音と教会の鐘の音だけ。1760年に出来たというDorfplatz(村の中央にある広場)を中心に、 歴史的な古い木造家屋が立ち並び、そこには美しいバロックオルガンのある教会があります。 1680年に製作された1段鍵盤とペダル(13ストップ)、小さい楽器ながらよく歌い、良く響く素晴らしいオルガンです。 美しい景色と自然の中で、オルガンが弾ける喜び。

教会のすぐ横の家を借り8日間、美しいオルガンを聴き、弾いての自炊生活。朝9時にレッスンが始まるので、 毎朝、午前8時に開店する村にたった1軒のマーケットへ。地元の食材を使ってのお料理も楽しく、 朝食には濃厚で美味しいヨーグルト、ミルク、チーズ、バターの乳製品を。アルプスからの水でイタリアンコーヒー、 ミルクをたっぷり入れて、すぐ横で鳴る鐘の音を聴きながらの朝食。昼食や夕食にはお肉やソーセージを 焼き、骨付きの分厚いポーク、新鮮なお花入りのグリーンリーフ野菜のサラダは素朴ながら大変美味しく、 またお料理と共にスイスワインも堪能しました。ヴァレー州の切り立った岩山に整然と葡萄畑が広がっていましたが、 スイスの澄んだ空気にも似た、きりりとすっきりとした赤、白。ロゼのワイン。国外にはほとんど出ていない、 日本でも手に入れにくいので一般には知られていませんが、実はとても美味しいです。しっかりとお腹に。

30年前に一緒にセミナーに参加したスイス人のオルガニストにも再会。エルネンの村はあの頃と少しも 変わっていませんでしたが、30年の時を経て、様々な経験、年月を経た私が再びその地を訪ね、 恩師と再会、感慨深いものがありました。この後すぐに、コンクールの審査委としてロシアへ行くことを話すと、「Graturiele!!!(おめでとう)」と 笑顔で手を差し伸べてくれた先生。教えていただいた音楽、そして今の私があることに感謝です。

受講生のコンサートでバッハを演奏し、音楽と共に過ごしたアルプスの村での8日間を堪能しました。

シオンの世界最古のオルガン、またルチェルンに2日滞在し、友人オルガニストの案内でMuri とSt.Urbanの歴史的な楽器 を弾かせていただけるという嬉しい機会にも恵まれて、とても充実したスイス滞在になりました。

昨日、ロシア上空を飛んで帰国しましたが、明日また成田からロシア、まずはモスクワへ。 スイスで弾いた歴史的なオルガンのことなど、ロシアから帰ってきましたらまたご報告させていただきます。

写真もロシアから帰国後、更新したいと思っています。それでは行ってきます!

(9/20)スイスでの写真アップしました。






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