オルガニスト楽屋話

第181話  チェコの古都での演奏会 ---2014.7.29.

昨日、18日間の長旅から帰国しました。今回は7月16日、チェコのリトムニェジッエという街で開催された 第24回夏期音楽祭に招かれての演奏会、そしてその後、チェコとドイツを旅してきました。

チェコでの演奏会は2回目、主催者とメールで連絡を取り合い、契約書などを交わし、現地へ。 前回、純朴で暖かく親切なお人柄に迎えられ好印象なチェコですので,今回も楽しみに向かいました。

6月の「スイスへの音楽旅行」から帰国し間もなくの出発、留守にしていた間のこと、 また留守にする間の仕事連絡や用事の片付け、そして演奏会の練習、旅の準備、手配。飛行機に搭乗しようやく ほっとするような慌ただしい出発、、それは乗ったばかりの羽田発ミュンヘン行き、同じ便の ルフトハンザで、数週間前のスイスへの旅を思い出しながら今回はプラハへ。

さて3回目のプラハ滞在,14年前の2000年に始めて訪れた時のプラハはまだ共産圏の名残もあり、 人も少なかったのですが,今や世界的観光地ですね、世界各国の言葉が飛び交い、 多くの観光客に溢れる街に。今回は旧市街中心の喧噪から離れた、静かなマラー・ストラナ地区の ホテルに滞在することに。以前、演奏したストラホフ修道院教会を訪ねたりしながら3日宿泊し、 時差ぼけを解消、体調を整え、演奏会が開催されるリトムニェジッエへ。演奏会の主催者の手配で 迎えの車がホテルまで来てくださり、緊張感ある中、リトムニエジツエへと向かいました

プラハを出て高速道路で約45分、今回の会場となるカテドラルの塔が聳え街が見えてきて、 カテドラルからすぐの所にあるPenzion(チェコ語でペンション)へと案内されました。 窓辺にゼラニウムの花が植えられた、静かで落ち着くお部屋、カテドラルへは徒歩2分。 オルガンはドレスデン(ドイツ)のJehmlich(日本ではすみだトリフォニーホールのオルガン)に よって修復された53ストップ、3段鍵盤の楽器。この街はドレスデンとも45キロと近く、 当時はボヘミア王国であり、音楽的にもチェコ、ドイツの国境はなかったことがわかります。 バロックオルガンを修復して大きくした楽器だそうで、バロックからロマン派、 シンフォニックな曲も演奏するのに充分な規模のオルガンで、充実した響き、また個々のストップも美しく、 オルガンを、そして何と言ってもカテドラルの残響を楽しみながらリハーサル。
(右の写真は、リハーサル中に。)

残響もですが、今回梅雨時の日本から出かけたせいか、特に感じたのはtrocken(ドイツ語で“乾燥した”) 湿度が低く乾燥した空気の中に響かせるオルガンの音の気持ちの良いこと、 そして乾燥した空気の中、オルガンを弾ける心地良さ!ヨーロッパの気候、風土の中でオルガンを弾けることの嬉しいことであり、 オルガンが本来あるべきところで弾くこと、これは私とってのリフレッシュであり、またエネルギーチャージです。

街の中央広場へは徒歩3分、ピンク、黄色やブルーの色鮮やかな建築物が広場を囲み、その下はお店やレストランになっています。 街の歴史は10世紀頃、チェコ最古の街のひとつで、温暖な気候な故『ボヘミアの庭園』とも呼ばれているそうです。 確かに果物が豊富で美味しく、また演奏会までの2日半、ランチとディナーの毎食を、広場に面した同じレストランで 提供してくださいました。いつもテラス席が用意され、前菜あるいはスープとメインディッシュ、 毎日よく考えられたメニューの美味しいチェコ料理は私の緊張した気分を癒してくれました。 チェコの人の味覚は繊細で、チェコのお料理は(近隣の国々より)薄味で美味しいと思います。

街中にはポスターが貼られ、JAPONSKO〜チェコ語で日本のようでした。 素敵な街でしたが、古都の道は石畳、それもデコボコで大きな石の石畳、、 周りの景色に興味津々で歩いていると、うっかり足元をはずしそうで、ここで捻挫をしては大変〜!と要注意。

コンサート前には美術館で13、14世紀の古い絵画や彫刻を鑑賞しました。 日本でコンサート前に美術館に行くなどとは叶わぬことで初めての経験でしたが、美術品の鑑賞で心 を静めることが出来、集中して本番、音楽に気持ちを傾けることが出来ました。
(右の写真は、演奏会前、カテドラル前の広場で。午後7時近くですが太陽サンサンです。)

演奏会、カテドラルいっぱいの人になり、拍手の中、最後の曲を弾き終わった私は会堂下へ降り、前方へ。 暖かい拍手に溢れ、・・・再び階段(4階の高さ位あります〜)を駆け上がり、息も切れている中、アンコールを弾くことに。 終演後、司教様から花束をいただき、コンサート後はカテドラル内の一室で綺麗に準備されたオードブルとワインで打ち上げ会。 お世話になった主催関係者(最後になってわかったのですが、街の催しを取り扱うエージェントのようでした)、 カテドラルの司祭様、司教様はじめ関係者の方々と歓談の時。そして広場のレストランでチェコ料理の夕食、 ワインで乾杯の時は深夜まで。歴史のあるチェコの古都での夜は耽るのでした。




数日滞在しているうちに、街の様子、人々の生活の様子もわかり、愛着を感じる街になり、 演奏会の翌日、街を去るのが寂しく悲しい思いになった、チェコの古都での演奏会でした。

(8月5日)チェコ、ドイツの写真も更新しました。


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