オルガニスト楽屋話

第193話 豊田市コンサートホールでの演奏会 ---2015.10.31.

10月17日、愛知県、豊田市コンサートホールでの演奏会に出演させていただきました。始めて豊田市へ。行き方を調べてみると、 新幹線で名古屋まで、名古屋駅からは電車を数本乗り換え約1時間ほど。幾つかの乗り換えルートがあり、電車に乗る、とりわけ乗り換えが苦手な私(とんでもない 方向に行ってしまうことしばしばなのです。)は困ったな、と思っていると、「名古屋駅からタクシーにお乗りください」とマネージャーさんから。やれやれ。 そして前日には、「改札に○○交通がお迎えが出ますから、その車にお乗りください。」・・と連絡が入ったのでした。大きな改札口で果たして会えるのか?・・
当日、新幹線名古屋駅の改札を出ると、交通会社の名札を掲げた運転手さんが待っていて、なるほど、運転代行 業者さんというわけでした、始めての経験。駅前に横付けにされていたのは10人乗り位の大きなワゴン車。その車で豊田市まで約50分。途中、高速道路に 乗っていた様子でしたが、ほっとした私は眠ってしまい、「あと数分で着きます」と起こされ、主催者スタッフの出迎えを受け、ホテルと ホールへ案内されました。豊田市の駅前は想像していたよりコンパクトで、全て数分以内の徒歩圏内。

しかしながらホールに案内されると、豪華で立派なこと、そのシューボックス型のホールの中央に リュック・ポジティフ(演奏するオルガニストの背中の部分にパイプがある)付きの、大きなオルガンが鎮座しています。 夏から秋にかけのヨーロッパでのオルガン体験がまだ体に残っている私には、華やかなシャンデリアやピカピカに整ったホールは くらくらしてしまう感もありで、日本だな、と。

今回はソプラノの足立さつきさん、トランペットの上田じんさんとのトリオ公演。彼らが到着するまでに まずはオルガンのレジストレーションをしないと。オルガンは、ブランボー(アメリカ)製作の4段鍵盤、62ストップ。 ブランボーの楽器は日本(アジア)でここにしかありません。 大きな楽器ですが、基本的には北ドイツバロック様式のオルガン。プログラムに用意したバッハとブクステフーデはぴったりだったと、 作品が生かされ膨れ上がる感触を喜びながらのリハーサル。オルガンの場合、まさに楽器に合った作品・・・というのがありますね。

一人での約3時間のリハーサル後、足立さんと上田さんが到着。ソプラノの足立さんとは10年(?)振り、 相変わらず美しく華やかな彼女との再会を喜び、トランペット上田さんとは初顔合わせ。 広いバルコニー(日本のホールのオルガンバルコニーでは一番広いと思います)は、共演者との演奏も楽に。 トランペットとのタルティーニ、ソプラノとのヘンデルなど、、またトリオでのスカルラッティ、 心地よく素晴らしく響きます。1000席のホール、バルコニーもですが、とにかく空間に余裕が有る。 余談ですが、楽屋も広く、冷蔵庫まで完備していました。

足立さんの美しく、またお人柄を感じるチャーミングな歌声、上田さんのリズム感に溢れ、表現力豊かなトランペット、そしてオルガンは、 響きの良いホールに荘厳に響き渡ります。何て素敵な響きでしょう。
美しい響きに満たされての、スカルラッティの『独奏トランペットを伴う7つのアリア』・・7曲、20分を超える曲ですが、 トランペットとソプラノが見事に掛け合う中、オルガンがそれを支えるという素晴らしい大作、奥が深い素晴らしい作品を演奏。 本番はそれぞれのソロ、トークも交え、1時間半のコンサート、素晴らしい共演者に支えられての演奏会になりました。(写真は 終演後にステージの上で・・)

ここのオルガンの魅力にとりつかれた私は、当日のリハーサル時間もみっちりとオルガンと対話してしまい(・・本当にそんな 印象でした☆彡)、素晴らしい楽器に出会い満たされた思いで、帰途につきました。

さて、今日はハロウィンですが、年々賑わいを見せ華やかになってきていますね。元々は秋の収穫祭だったそうですが、確かに秋の味覚、美味しい季節でもあります。 ハロウィンが終わるとクリスマス。オルガンがもっとも似合う季節でもあります。
12月19日(土)は川口リリアホールで、オペラ歌手の 藤田美奈子さんと、クリスマスコンサートの予定もあります。 クリスマスにふさわしい素敵な音楽、そしてオペラの名曲をオルガン伴奏で。お楽しみいただけますプログラムを準備し♪、 ぜひお聴きいただきたく、お待ちしています。
芸術の秋、美しいオルガンを弾くことが出来、 音楽によって生かされている私を感じながら、そして食いしん坊な私は秋の味覚も楽しみ、 クリスマスシーズンへ向け準備を重ねています今日この頃です。


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