オルガニスト楽屋話

第200話 ドイツへの演奏旅行〜その1 ---2016.8.11.

ベルリンとザクセン地方での3公演のため、7月25日羽田からフランクフルト経由でベルリンへ。

今回演奏した聖マリア教会は、ドイツの首都、ベルリンの中心(ミッテ)、テレビ塔のあるアレクサンダー広場に建ち、 近くにはドームや美術館があり、観光客も多く、賑やかな所にあります。

この教会にあるワーグナーオルガン(1723年)、製作したヨアヒム・ワーグナーはフライベルクにある ゴットフリード・ジルバーマン(バッハの時代の名オルガン製作家)の工房で弟子として働き、その後ベルリンに移り、 マリア教会はじめベルリン周辺にオルガン残した製作家です。聖マリア教会のオルガンは、 1999年ダニエル・ケルンによってワーグナーオルガンを忠実に再現、修復された3段鍵盤とペダル、45ストップのオルガンです。

響きの良い教会、各ストップの個性がはっきりとし、繊細なタッチで演奏表現が自在に出来、美しく良く歌うオルガンでした。 リハーサルのために、オルガンのあるバルコニーに行くまでに4つの扉の鍵、またセキュリティーがかかっているため 解除キーも渡され、空いている時間はいつでも弾いて良いと。一般に公開される時間は観光客も多いので、朝8時に教会へ。 誰もいないと思い鍵を開けると、オルガンの音が聞こえ、バルコニーに上がるとすでに練習している人が。 彼は毎朝6時から弾いていると。どうぞ!と譲ってくれましたが、主オルガニストは夜練習するのが好きだと、、 この教会、一日中オルガンが弾かれているのですね。

響きの美しいオルガンを弾ける幸せ、充分なリハーサル時間もいただけ、演奏する楽しみと喜びを感じて、 演奏会に臨むことが出来ました。 演奏後、バルコニーから会堂下へ降りると、ニコニコ笑顔で私を見ている人が。 「ダニエル?」メール連絡をくれていた副オルガニストさんかなと思い、声をかけてみると、 「トーマスだよ」「え??トーマス?」「トーマス・ノルだよ」・・・留学時代フライブルクでの同門下生でした。 フライブルクはベルリンからははるか南、遠いです。ベルリンで働いていて、私の名前を見つけ聴きに来てくれたという。 何て嬉しいこと!そしてフライブルク時代にお世話になり、ドイツの親のような存在だったロータリアン (私はロータリー財団から奨学金をいただいての留学でした)の息子さん夫妻も。嬉しい再会もあったベルリン公演でした。

ベルリンでは教会から歩いて2分程、ハッケンシャーマルクトにあるアパートメントホテルに1週間滞在。買い物も至極便利、 すぐ近くにビオ・マーケットBIO COMPANYあり、そこで美味しく新鮮なオーガニックの食材・・野菜、果物、お肉、が手に入り、 ドイツ留学時代を懐かしみ、自炊を楽しみました。特にチーズ、ミルク、ヨーグルトなどの乳製品は美味しく、 ドイツパンとチーズとワインだけでも満足、それにソーセージやビーフステーキを焼けば大満足。リビングルームと寝室、 それに小さなキッチンでしたが食器類も整い冷蔵庫、食洗機もあり、バスルームには洗濯機と乾燥機もあり、ベルリンから始まった 17日間の長旅、最初の1週間ほとんど外食せずにすんだので、お腹も疲れず終えることが出来ました。。。

ベルリンでは自炊でしたが、1度だけミシュランひとつ星のレストランへ。雰囲気の良いおしゃれなレストランで、ドイツーフレンチ、 厳選された食材で丁寧に調理されたお料理は、忘れられないほど美味しい都会の味でした。

さて、ベルリン公演の翌朝、バスでライプチヒへ。そこからレンタカーを借り、次の演奏の地、ポルディッツPolditzへ。 ネットで予約したレンタカー会社Sixtのカウンターは駅の1番線にあり、そこで契約書を確認すると、車のキーと駐車券を渡されました。 車は隣接する駐車場の指定された場所にあり、駐車券で外に出られるのです。なるほど、合理的なシステム。 小さなドイツ車、BMW1かMercedes B、Golf あるいはそれに類似する機種、と予約を入れたのでドイツ車だと期待をしたのですが、 プジョー380。しかしながら まだ4000キロしか走行していないほとんど新車、綺麗な車で(さすが、ドイツ!)、とても乗りやすく、大きなスーツケースも楽に載るハッチバックは便利。 早速ナビゲーションにRoethaと。このナビが非常に優れていて、的確で正確で利口で、そのお陰でその後の旅、 どこへでも迷うこともなくスイスイと。大変助かりました。ライプチヒからアウトバーンと一般道で20分、レータに到着。 ドイツの道路は整い、標識、表示がしっかりし、皆ルールを守り、運転しやすかったです。

Roetha レータ村、山梨キングズウェルのオルガンのオリジナルがある村です。以前から訪ねてみたかった所ですが、 今回2つ目の公演地に行く途中であることがわかり、立ち寄ることに。事前にメールでオルガニストさんと約束をしていたので、 待っていてくれました。ライプチヒへのバスが途中道路工事で1時間の遅延、遅くなりごめんなさい、と途中から電話をすると、 「全く大丈夫。教会の扉を開け弾いていますから、どうぞ入って来てください」と。お花いっぱいの墓地に囲まれた小さな教会。 ドキドキしながら教会内へ。

日本にコピー楽器があることを話すと、大変驚き、「さあ、どうぞ!お好きなだけ弾いて良いですよ」と。感激の中、 しばらく弾かせていただきました。初めて弾くのに、馴染みのある感覚。古くこじんまりした礼拝堂に、それは美しいオルガンでした。 「もう一台のジルバーマンも弾きませんか」・・レータ村には、もう一台ゲオルグ教会に2段鍵盤のジルバーマンがあり、 そちらも弾かせてくださるというのです。感謝! マリア教会から小路を歩いて数分の所にあるゲオルグ教会へ。こちらも演奏台、鍵盤の掘れから長い年月弾かれてきたこと、 歴史を感じる素晴らしい楽器。レータ村は人が住んでいる気配もないような静かな村でしたが、ここで歴史的な2つの名器に触れることが出来ました。


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