オルガニスト楽屋話

第215話 美しさに囲まれて・・6月の演奏会 ---2018.6.21.

6月、水無月を迎えていますが、初夏を思わせるような日差しの日の合間に降る雨は、草木にとっても癒しの雨、樹木を生き生きと緑にしてくれ、 気温も低く、しっとり感もたまには悪くないかなと。雨降りの夜、バルコニーで、雨が樹木に当たる音を聴きながらワインを飲み、 ミストな空気の中で静かに 一日の疲れをとるのも好きな私です。

さて、今月は素晴らしいソプラノ歌手の方との共演の演奏会が続きました。普段、どちらかというとオルガンは厳かではあるけれど、 暗くて地味、、、ですが、華やかで明るいお二方との共演、ステージも華やかに。終始、笑顔で、明るく、そしてファッショナブルで、素敵で、 そんな方々と心をひとつにして美しい歌声の伴奏♪、共に音楽出来る幸せいっぱい。

6月3日、北九州の黒崎市ひびしんホール。ソプラノの市原愛さん、トランペットのアンドレ・アンリさんと、トリオのコンサート。 デュオあり、トリオあり、そして私のソロもあって。演奏会場は 福岡空港、北九州空港、両空港の間にあり、私は福岡から現地へ。初めての黒崎、駅からも近い場所に、立派なホール。 残念なことにパイプオルガンはないのですが、ローランドのクラシック・オルガンをお借りし持ち込みました。この楽器、無数の音色が出せます。 ドイツバロック、フランスシンフォニック、32フィートの低音など大オルガンにもなかなか叶えられないような音色まで。リードの種類も沢山で、時代、作品の様式に合わせて 音色を選べるという利点。一台にして、各地方、各時代、様式のオルガンを再現出来てしまう。 表に出ているストップの裏側に、無数の音色が隠れています。ダイナミクスも自由自在。実は我が家にも同じ楽器があり、 今回、私としてはこれ以上ない、という程、凝ったレジストレーションで臨みました。というのもこれまた便利で、自宅で多くの時間をかけてセットした音色を、 メモリースティックで他の楽器にも(機種が合えば)再現できるからです。今回はホール主催のコンサートでしたが、こうして オルガンがないホールでも演奏できることが、わかりました。

事前に東京でリハーサルをし、そして前日現地入りし、会場でリハーサル。市原さんの美しいお声、アンリさんの音楽性溢れるトランペット、 お二人ともとてもユーモラスで楽しいお人柄、3人の心を合わせて音楽を創っていく現場は とても楽しいものでした。そして本番のステージも、最後のアンコールでは市原さんがステージから客席に降り、お客様の間を歌いながら歩かれ、 会場は大きな拍手で満たされました。

右上の写真は、オルガンも弾かれるという気さくな館長さんと。市原さんのドレスと私のトップス、お色がぴったり。 いつも共演、伴奏の時には、事前にドレスの色を伺います。写メを送ってくださる方も。この日はブルーとピンクと伺ったので、 私はブルー2着、黒、の3着を持参し、楽屋で実際に見せていただき選びました。偶然このE.Armaniのトップス、 ラメが入っていて、ライトの下では少し光るのですが、お色がぴったりで、市原さんから「これがいいわ!」と。

左の写真は、終演後、アンドレ・アンリさんと楽屋で。お客様にも楽しんでいただけたかな、と三人の笑顔。 新しい地で、館の方はじめ多くの方との出会いがあったこと、 私のCDをお持ちくださり、長年聴いてくださっているとサインを求められた方も。帰りには福岡で、厳選された地元の食材を 使ってのとても美味しいフレンチ・ディナーをご馳走になり、最終便で帰宅、嬉しい出会いもあった黒崎公演でした。

そして昨日、9月20日は東大駒場キャンパスで。小さなオルガンですが、暖かく熱心な東大の先生方で形成されるオルガン委員会のメンバーの 方々に歴代可愛がれ、愛されている楽器です。その情熱と、毎回集まる音楽ファンのお気持ちに支えられてでしょう、 オルガンの規模を忘れさせられる演奏会が続けられています。今回は、素晴らしい音楽性と歌唱力の藤田美奈子さんに ご出演いただき、そしてヘルマン・ゴチェフスキ先生のお話で、盛り立てていただいての会となりました。

聴きどころは、有名なバッハ作グノー編曲のアヴェ・マリア。バッハの平均律ピアノ曲集の第1番を伴奏とし、グノーが 旋律をつけた名曲ですが、実はバッハの作品から1小節削られている。それで、バッハのオリジナルの原曲の上に旋律を付ける・・つまり 新しいアヴェ・マリアの旋律となるわけですが、この論文をゴチェフスキ先生は書き、そして作曲されました。その 初演、お披露目となりました。これは全くの偶然で、私たちが選んだプログラムにたまたまこのアヴェ・マリアがあり、 オーボエとピアノ用に書かれたいたものを、歌詞を付け、歌とオルガン用にしてくださいました。つまり、 バッハ−グノー−ゴチェフスキ版のアヴェ・マリアです。長いオルガンソロで始まり、その後、ソプラノの旋律が現れ、 ソプラノとカノン風に掛け合います、オルガンパートの旋律は全てペダル、超絶?技巧。歌も音域が高く、難しいそうですが、本番は成功のうちに。素敵なアヴェ・マリアの初演となりました。

実はゴチェフスキ先生は、私がドイツ留学時代、フライブルク音大で彼はピアノ科でした。東大で音楽学を 教えていらっしゃいますが、彼は天才だと思います。

藤田美奈子さんとの楽屋。美しくゴージャスなドレスに着替えられ、髪のセットもばっちり。そして大きな宝石箱を開けられている。わ〜、何て綺麗なの!! キラキラ光るイヤリングがいっぱい。ドレスやその日の気分に合わせて選ばれるのだそう。ネックレス、ブレスレットもキラキラ☆彡 私とは無縁の世界。お姫様のような、王女様のような。そして今回もドレスのお色に合わせて、 ブラウン系のスパンのJ.Ashidaのトップスを選んでいただきました。シックなお色がお好きだそうです。楽屋も華やか。

お二方の美しいお声が、まだ体の中に満たされています。幸せな2つの公演でした。

今年はあと3回、ソプラノ歌手の方との演奏会の予定があります。9月に名古屋、10月に豊田、そして10月後半にこちらは外部の方が入場出来るか 調べておきますが(詳しくは<スケジュール>のページをご覧ください)市原愛さんと再演、お近くの方がいらっしゃいましたら、是非お聴きいただけたらと思います。
お二人の美しく、エレガントなお姿、、私もそうありたいと願い、また日々精進♪、来月の渡欧に向け、演奏そして旅の準備をしていきたいと思っています。


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