オルガニスト楽屋話

第22話 新しいアルバムによせて ---1998.10.8.

いよいよ来る10月21日、新しいアルバムが発売になります。 10枚目ということで、私にとってもひとつの節目で、色々なことを考えます。

デビューアルバムが発売になったのが、1989年・・早いもので9年前。 レコード会社からお話をいただいた時は、本当に信じられないことでした。 <背中向きで弾く楽器なんて、売れないよ>というレコード会社内での強い反対を押し切って、当時のディレクターが進めた話だったそうです。 これは私にとって生涯2度と無いチャンス!、<最初で最後のチャンス>と思っていましたから、とにかく夢中でしたし、全てをかけました。 もしもあの時、すでに10枚のCDの録音が約束されていたら、あのようなエネルギーは沸かなかったことと思います。

ジャケットを見てみますと、録音は5月23日〜25日。おりしも父が他界したのは4月28日でした。今の私だったら延期をお願いしていたでしょう、 けれどもその当時の私には出来なかったことでした。次の機会など与えられないと思ったからです。 深い悲しみの中、なんとお骨の横で、遅れて届いた編曲<ガーシュインメドレー>の 譜読みに追われる私・・それは信じがたいものでした。

幸運がめぐり、順調なペースで録音活動も続いてきました。録音は毎回、全力投球であったことには間違いありません。 ひとつひとつに大きな思い入れがありました。

しかし今回は、とりわけ<特別なアルバム>になります。と言うのは、これまでとは違ったサウンドがお届け出来るからです。 録音は昨年5月 宮城県白石市に誕生した、わが国初のロマンティック・シンフォニックオルガンで実現しました。 これまでのネオバロックオルガンでは理想的には弾けなかった作品をここで是非弾いてみたい!・・こういう気持ちにかられてのことです。 ですから収録曲は、ダイナミックなロマン派の作品、そして私の心の中で暖めてきた美しい旋律の小品・・私のお気に入りにの作品ばかりです。 私の音楽が歌われ、存在し、私らしさが表現出来たアルバムが出来ましたこと、そしてこれが記念すべき10枚目のアルバムとなることは喜びです。

コンサートの後、サイン会などあることがあります。CDジャケットにサインをし、「ありがとうございます!」・・これは本当に私の心からの気持ちです。 出来ることならば、これまで私のCDに耳を傾けてくださった、おひとりおひとりにこの気持ちを伝えたいものと、いつも思うのです。

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