オルガニスト楽屋話

第228話 クリスマス、おめでとうございます! ---2019.12.26.

皆さまはどんなクリスマスをお過ごしでしたでしょうか。今年は3つのクリスマスコンサート、そして教会でのイヴ礼拝。12月はとても忙しく、こんなスケジュールこなせるの、と思うような大変なスケジュールの 日もあったのですが、インフルエンザなど流行の中も、体調を崩すこともなく、一昨日全てが無事終わり、ほっと安堵しています。数カ月にわたり準備し、演奏したクリスマス関連の 楽譜を本棚に戻し、早いですね、今年もあと僅かとなりました。

まずは12月12日、山梨県キングスウェルで。私が企画しています、毎月第2木曜日に開催される、ランチ・コンサート・シリーズなのですが、 演奏をお願いした演奏家の皆様にご都合の良い月を選んでいただいたところ、やはり12月はオルガニストにとって繁忙期だからでしょう、最後に残ったのがこの月 で、私が演奏させていただくことになりました。

綺麗なクリスマスの飾りつけがされたキングスウェルのホールとレストラン、ガーデンにはまだ薔薇も少し咲いていて、30分の演奏でしたが、「世界のクリスマス」と(個人的に タイトルを付け)、フランス、イタリア、アメリカ、ドイツのクリスマスの曲をお聴きいただきました。
美味しいランチと共に、クリスマス前のひと時をお楽しみいただけたかな、と思っています。楽器に合わせての選曲なので、 他の2公演とは全く違うプログラム、オルガニストにとっては大変なことなのですが、でも美しく歌う、ザニンのオルガンと共に、私自身も楽しんだ コンサートでした。

22日は福島音楽堂、今は「ふくしん夢の音楽堂」と名称が変わり、プロモーション・ビデオ撮影の際には、この名前を一生懸命覚えたのですが、 福島駅からタクシーに乗り、この新名称を伝えても???通じず、「音楽堂」と言えば、理解してもらえました。

私がデビューCDから始まり、10枚のCDのうち5枚を録音したホール。 懐かしい、古き良き友と再会した感じでした。

白石でオルガン講座をさせていただいていますので、新幹線で一つ手前の駅が福島。12月半ばの講座の日に、午前中 3時間福島でレジストレーションをし、また新幹線に一駅乗り、白石キューブへと急いだ日もありました。 まだ真っ暗な早朝、自宅を出て、東京駅6:40発の新幹線に乗り、この日もハードなスケジュールでした。

ただ現地にリハーサルに行き驚き、また事前に行って良かったことは、コンビネーション(音色の記憶装置)が32しかないということがわかったこと。 今回演奏するプログラムには100以上必要なところ、32!!いえ、以前はこれが当たり前だったのですが、コンピューター・システムはどんどん進化し、 今や、1万〜2万、ほとんど無限に近い数のコンビネーションがある、あるいはそうした新しいシステムに替えた、ホールのオルガンがほとんどで、 私もうっかりしていました。そしてステップ(先送り)のシステムもない、う〜ん、アシスタントなしで演奏する私には大変。でも 楽器の機能に合わせて音作りが出来ました。しかしながら、福島のオルガンの音色、ホールの響きは最高!!ここの響き、私は日本で一番好きです。

響きの良いホール、オルガンが私の演奏を高め、引っ張っていってくれる、、音楽的な発見もいっぱい、思いの通り自在に表現出来、表情豊かに歌う楽器、 いつまでも弾いていたくなる大好きなオルガンです。

演奏会当日は、クリスマス・カラーの生花がバルコニーに飾られ、そして照明もクリスマス・カラーに(左上の写真)。共演者のソプラノの藤田美奈子さん、 トランペットのアンドレ・アンリさんと、曲ごとに色を選び、演奏しました。ソプラノ、トランペットとの響きも、美しく、 ブラボーの声も飛び、アンコールでは手拍子まで・・盛り上がりました。会場の皆様とクリスマス前のひと時を、音楽と共に喜びを分かち合えた演奏会となりました。

さて、ホールの天井が高く、オルガンが高い位置にある福島の音楽堂。音響はそれゆえ素晴らしいのですが、バルコニーまで、ステージからまずは木の急な階段を7段。 その後、さらに急で狭い螺旋階段を20段。しかもそれがステージ裏ではなく、ステージ上、つまりお客様から見える場所にあります。 階段を一気に登ると、息も切れる、、これですぐ演奏出来るのか、、。休憩をはさんでの前半と後半のプログラム、 私はずっと演奏台に居れば良いのですが、ソプラノの美奈子さん、トランペットのアンドレさんは何度も出入りをする、、。 私はパンツスタイルなので大丈夫だけれど、ロングドレスでヒールの美奈子さんはどうするのだろう、、。ドレスとヒールで 階段を昇り降り出来るのか、時間もかかるし、危険ではないか。プログラム(演奏順)を変更すべきか、、事前にリハーサルに行った時に この急な螺旋階段に気づき、主催者に相談すると、「これまで経験はない」、「プログラムの原稿締め切りは今晩まで」、と言う。慌ててマネージャーさんに電話。 しかしながら、「当日、現場を見て考えましょう」・・という返事だけで取り合ってくれない。ホールも「当日、出来る限りのことをします」と、、 誰も大変なことだと考えず、私一人、眠れなくなるような日を過ごすことに。

前日、皆で現地入り。オルガンの影に客席から見えない待機場所はあり、そこで座って待っていることが出来ることが判明。しかしながら オルガンを実際弾いてみると、オルガン横、あるいは裏は大音量になり、耳栓でもしないと待っていられないことも判明。 プログラム前半の私のソロは、大音量にはならないので、待機は可能。しかしながら、後半に演奏する私が演奏するハキムの現代作品は 迫力あるTuttiの連続、オルガンの脇での待機は無理。昇り降りするのか、耳栓をして待機するのか、 決まらないうちに前日のリハーサルは終了。

結局、演奏会当日の朝に曲順の変更をすることを私が提案し、私はハキムを2部の冒頭で演奏することにし、会場にはアナウンスを掲示で告知し、本番に。 プログラム構成を変えるのは、私の真意ではなく、仕方なく、、の解決法でした。私のソロ演奏の間、オルガンの陰で待っていてくださった美奈子さん、 アンドレさんも大変だったことと察します。

色んなことがありますね。こんなハプニングがありつつも、やはり響きの良さは最大の強みで、リラックスし、響きに酔いながら過ぎていく時間を惜しみながら 演奏しました。

さて福島での演奏終了後、CD販売、サイン会を終え、翌日、23日は名古屋で午後(しかも1時半からの)公演。 タクシーを飛ばし、東北新幹線に飛び乗り福島から東京へ。東京で東海道新幹線に乗り換え、名古屋へ。車中で夕食をとり、 福島と、鍵盤やコンビネーションが違うので、楽譜への書き込みも全部書き換えの作業も。

今回、2つの公演が続き、名古屋では前日にリハーサルが出来ないため、事前に別日に名古屋でレジストレーションすることに。 これも大変でした、というのは12月はホールの使用もラッシュアワー、愛知県芸術劇場、事前のリハーサルは、12月8日の夜間しか空いていないというのです。 日曜日の午後5時半から10時、4時間半、大きなホールで事前リハーサル。ただ夜10時までホールに居ると、最終の新幹線には間に合わないのです。 翌日に東京で予定があった私は、翌朝6時半にタクシーを予約、名古屋駅7時発の新幹線で東京へ。この日も真っ暗な朝の移動でした。

さて福島から名古屋へ着くと雨、日曜日で車の数も少なく、タクシーを待つ長い列。ホテルに落ち着いたのは夜の9時過ぎ。 そして翌朝、6時に起き、朝食をとり、8時に予約した美容サロンへ。昨年お願いした ヘアスタイリストさんに今年もお願いしました。9時に私はホール入りし、事前にセットしておいたメモリーを確認。 愛知県芸術劇場には2つの演奏台があるので、2つの演奏台で準備。最初の3曲だけをオルガンの横で、あとはステージで演奏、、と準備していました。

美奈子さんとアンドレさんは11時半にホールへ到着。リハーサルを始めると、最後の2曲以外、全曲オルガン本体の横で演奏したいというお二人、、。 愛知県芸術劇場のコンビネーション・システムは、昨年新しく変えたもので、2つの演奏台が同じシステム、同じ仕様になっていて、 下の演奏台でセットしたメモリーは上でも使えるという最新のシステム。「まあ可能かな」、と思い、Yesの返事をしてしまったものの、 私のソロはロマン派、現代作品で、全てステージ上で演奏することになっていて、 ステージ上の演奏台は電気式、上はメカニック式、、とタッチや弾き心地は全く違う演奏台を行き来しなければならないことに。 そして演奏台を変える度に電源を落とす必要があり、その操作は(舞台スタッフではなく)私がしなければならないことに。 さらには、電源を入れるたびに、私のメモリーの領域を呼び出す作業(暗証番号4桁の入力)が必要なことも発覚。 開場の1時も迫り、全てを確認する時間もなく本番の時間を迎えた私・・。

結局、最後のオペラアリア2曲と私のソロはステージで(右下の写真)、あとはオルガン本体の横で演奏しました。

本番直前になっての演奏台の変更、これは想像以上に大変でした。連日の公演、2つの楽器、移動、楽器に合わせてソロの曲は変えたし、 頑張った今年のクリスマス公演でした。(右上の写真は、愛知県芸術劇場でのリハーサル時に・・この場所が気に入ったお二人でした。)

「大変ね、大丈夫?」「ご苦労様」、、などと家族に言われながらの12月。半分は、そんなにしなくても、、と言わんばかりに、、。 いえいえ、誰からの指図でもなく、私の希望で意志からです。 オルガンが弾きたくて、弾くのが楽しくて、、というのがしっかりと私の根底にあり、それが原動力になって強く支え、私を動かして くれているように思ってやまない今月でした。健康を支えてくれているのも、この気持ちのパワーかも。

この多忙な中でも、水泳、ジムトレーニング、フラ・・を楽しんでいた私。そんな中、お友達からフラダンスのロングドレスを30着(!!)、スカート10着の プレゼント、それにレイや髪飾り・・華やかで豪華なご衣裳にうっとり〜。「ステージ衣装より似合うよ」、と言われたり(笑!)。 色鮮やかなハワイ柄に癒されつつ、コーディネートを考えたり、クリスマスには早速着用し楽しみました。Thank you!!

私がオルガニストを務める大森めぐみ教会は響きのとても良い新礼拝堂が完成し、3年間倉庫に眠っていたオルガンが再現され、涙。元旦朝にも奏楽します♪ このお話はまた次回に。
今年はフィンランド、中央アジア、での演奏会他、多くの方にお聴きいただき、健康に過ごせた1年でした。応援し、支えてくださいました方々に感謝です。 皆さま方もどうぞ良い年末年始をお過ごしください。Happy Holidays and joyful new year, from Keiko!!

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最終公演、アルマティ(カザフスタン)で
主催者が映してくださった写真です。




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