オルガニスト楽屋話

第230話 イースターに寄せて ---2020.4.12.

今日はイースター、教会の礼拝でオルガンを弾き、キリストの復活を祝う礼拝を守ってきました。前奏にはバッハの華やかな 「前奏曲ハ長調」、復活祭のコラール作品を数曲弾き、受難節から復活祭へと、美しい音楽と共に過ごす私です。

しかしながら世の中では新型コロナウイルスが蔓延し、世界中で多くの命が失われています。爆発的な感染者を出したイタリア、 医療関係者、臨終の際に立ち合った司祭の方々はじめ多くの尊い命が奪われたことに、心が痛みます。 アメリカでも医療崩壊という信じられないような事態になり、今なお多くの感染者、死者が出ています。 家族や親しい方を天に見送られた方には心よりご冥福をお祈り致します。そして医療現場で、日々懸命に 従事されている方々には感謝の気持ちでいっぱいです。

本来ならば、「Happy Easter!」と言いたいところですが、日本のみならず、ドイツ、アメリカはじめ欧米諸国で 外出規制。春めき美しい季節を迎えているこの季節にイースター休暇を楽しむことも出来ず、またキリスト教徒にとっては イースターに教会が閉鎖しているとは、有り得ないような事態です。

こうした状況下でも自宅で礼拝を守れるようにと、ネットでの配信礼拝が始まりました。司祭(牧師)、奏楽者、それに讃美歌を歌う声楽家、 最少人数で守る礼拝です。ドイツ、デンマーク、スウェウーデン、、様々な国の教会での礼拝に与り、また式典の在り方や奏でられる 音楽について知ることも出来ます。

東京でもいよいよ自粛規制要請が発令され、教会を閉めることはありませんが、私がオルガニストを務める大森めぐみ教会では、 最少人数で礼拝を守り、配信での礼拝になりました。会衆が少なくなり讃美歌をどうしようか、、今日はヴィオラとテノールの教会員の方に お手伝いいただき、豊かな音楽で奏楽することが出来ました。演奏会など中止になる中、私には教会での活動がありますことは救いであり、 こうした制限された中でも音楽出来る喜びを感じます。教会に近く、公共の乗り物も使わずに行ける私が、今のところ連続して弾いています。

薬やワクチンがなく、感染力が強く、また潜伏期間も長く、そして無症状者も他者に感染させてしまうという厄介なウイルス。 中国、日本、そしてヨーロッパ、アメリカへと拡大のスピードも脅威でした。 感染爆発を何とか食い止めなければならない。 距離を保っての生活、一人一人の心がけ、人の動きを止める協力が感染拡大を止める、つまりStay at home。

私にとって家籠りは退屈ではありません。家でやりたいことがいっぱいあり、普段出来ないことに時間を費やせるのも良いことです。 オルガン練習に加え、新曲を見る、新しい曲を探す、資料を読む。普段、時間がなくて急ぎの中でやっていた(全ての)ことを、丁寧に出来る。 練習に疲れると、お料理をする。慌てて、息せき切って作る食事もゆっくりと、、一品増えたり。普段できないところまで掃除が出来、いつか、と先延ばしになっていた片付けも出来る。 家族と過ごす時間も増え、人間的な生活かもしれません。

しいて言えば、ジム、プールが休館なのは辛いけれど。普段、1000〜2000メートル泳ぎ、ジムで体を動かしている 私は、、、このままではまずい。規制が始まった日から、走ったこともないような私がジョギングを始めました。 いつまでも続くかですが、我が家前の多摩川ジョギングコースを、毎日約5〜6キロのジョギング、3日坊主にはならず、今日まで4日続いています(笑)。目指すは スポーツクラブ開館まで毎日欠かさずに続けること。

イヴェントも自粛要請、予定されていた演奏会、教会の献堂式、私が企画していた演奏会、欧州からの招聘をお手伝いしていた演奏会、 お弟子さんの発表会、、、悲しいことに、全てキャンセルに。 綺麗なチラシを作成し、告知、チケット販売も始まっていた演奏会もキャンセル、そしてチケット払い戻しに、、一生懸命準備してくださった主催者の方のお気持ちを察しますと、私も 心が痛み消沈します。

ヨーロッパとの国境閉鎖、この規制でヨーロッパからのオルガニストも来日が無理に。恩師サットマリー先生の来日も不可能になってしまいました。 久しぶりの来日であり、川口リリアホールでは共演の企画もありましたのに、とても残念です。

教会の献堂式も延期に。響きの良い新会堂に設置されたオルガンでの演奏会初回の企画も中止に。上記の公演も、 全て中止ですが、延期の予定がありますので、どうぞまた覚えていただき、感染の不安が無くなりました時に、 音楽を心行くまで楽しんでいただきたいと思っています。 詳しいことが決まりました折には、ホームページ上でもお知らせさせていただきますので、よろしくお願い致します。

中止になるのかならないのか、、主催者の方々と連絡を取る中も、最終決定を受けるまでは演奏家は準備、練習の毎日です。 オリンピック選手同様、その演奏会に向けて調整し準備、練習を重ねていますし、目標が定かでなくなると気力の保持が大変です。

6月のスロヴァキアとドイツでの公演がどうなるか、、いま、鎖国状態、入国すら無理です、難しいだろう、、と思いつつ、 やはりその練習は中止という連絡が入るまで日々続けています。

桜の花は、世田谷砧公園での散歩の時に映した写真です。桜は何も知らず、いつもと同じように美しい花をいっぱいに開花していました。 それにしても私達をこんなんにも苦しめるこのウイルス、私達人類への警告や戒めではないかと考えたりします。 自然を破壊し、便利さを追求し快楽、身勝手な希望ばかりを追ってきた人間。大気は汚染され、自然は壊されていたことに気付かずに。 飛行機が飛ばなくなり、空は綺麗になった感があります。本当に必要なことは何か、考えさせられたり。 必要なことを大切にし、欲望ばかりを追わないように。

外出は必要最低限にしています、食料品の買い物と教会でのオルガン練習。買い物はスーパーの空いている時間に行く、毎日は行かない。 免疫を付けるためにジョギング、きちんと食べて、よく眠る。

いまは皆の協力が必要なのです。人との距離を保つ、動かない・・一人一人出来ることを心掛けていきましょう、それが感染を抑える 唯一の方法なのですから。そして早く普段の日常生活が取り戻せますよう、そして音楽の喜びや楽しみ を共に分かち合える日の再来を、祈るばかりです。






Index