オルガニスト楽屋話

第234話  静かなお正月 ---2021.1.2.

新年、明けましておめでとうございます。コロナ感染が収束することを願って、早11か月近くが経ち、新年を迎えることになってしまいました。 昨年は様々な形で、日本中、いや世界中の人々の生活が、我々かつて経験がない、見えないウイルスに脅かされました。沢山の尊い命が失われたことに心を痛め、また 日夜、医療に従事してくださっている方々を思い、心配な中、迎える2021年。ワクチンが出来たという嬉しいニュースもありましたが、 目下、欧州の諸国はロックダウン、また東京も年末には一日の感染者数が一気に1300名と、感染拡大の状況は残念ながら、止まる目途がつかない状況です。 クリスマス、そしてホリデーシーズンにロックダウンとは、どんなに悲しく寂しいことかと、欧米に暮らす友人たちのことを思います。

ドイツに住むオルガンビルダーの友人から届いたクリスマス・カードに、「コロナに感染してしまった」と。幸い入院はせずに軽症だったけれども、夫婦で2週間の隔離生活を送ったと。 昨年、ドイツでの演奏会が開催されていれば、会う約束をしていた友人です。
クリスマスイヴには、デンマークに住むオルガニストの友人から、「陽性の結果が出てしまった」と。教会の牧師や 聖歌隊、また配信の際のソリスト達の間で、クラスターになってしまったそうです。さぞかし大変だったことと。
クリスマスは街の中心にあるカテドラルや教会は、町中の人でいっぱいになります。キリスト教会歴で重要であり、また華やかなお祝いの日に教会閉鎖とは、、あり得ないことです。

クリスマスに、教会が閉まる・・信じられない事態が欧米では起こってしまいました。人が集まる集会の禁止、何とも皮肉な事態です。屋外で歌う聖歌隊の姿も、ドイツのニュースで放映されていました。 牧師(司祭)とオルガニスト、それに楽器や歌のソリストなどを加えたりし、ライヴあるいは収録(編集)してオンラインで流す、など、、様々な形でミサや礼拝が執り行われました。 「もう大変、大忙し〜、時間がない!!」と同業の欧米のオルガニストから23日に悲鳴の声。讃美歌のオルガン伴奏を録音し、それに合わせて各声部ごと聖歌隊のメンバーが自宅で収録、 それを合体し編集している言うのです。イヴの前日に、大変そうでした。
急遽、歌の部分をオルガンソロへの変更になったり、事前にまとめて収録したり、、、と、とにかくロックダウンの中での礼拝は大変だったようです。よくわかります。

幸い日本では、礼拝を中止している教会はなく、人数を制限・・事前申し込みや、歌唱の部分を省略したり、聖歌隊歌唱をオルガンに変えたり、、 オンラインにしたり、色々工夫し、また注意を払って執り行われるところが多かったようです。
左上の写真はクリスマス礼拝の奏楽時に、私の教会で。マスクの音符は讃美歌「きよしこの夜」の楽譜です。昨年は、新しい礼拝堂も完成し、 クリスマスイヴのキャンドルサービスでは、300名を超える大勢で声高らかに歌った讃美歌ですが、今年は人数を制限しての礼拝。 それでも礼拝が守れたことに感謝、キリストの降誕を祝うクリスマスは変わらず訪れる、すなわち神様はいつも私たちのそばにいてくださるということを 思わされるクリスマスの礼拝となりました。

親しくしてくださっている教会の友人方からいただいた、お手作りのリースやクランツに囲まれて過ごすアドヴェント(クリスマス前の4週間)。 毎日曜日、1本ずつ蝋燭を灯し、この日は4本の蝋燭に灯りが燈りました。クランツを囲んでの食卓、忙しい中にも心温まる時間です。 こうした気持ちの余裕もよりありました。少し人間的な生活かな、と思ったり。これまでが正直忙し過ぎでした、ひとつひとつのことを 大切に出来ることに幸せを感じた私、、静かでしたが穏やかで良いクリスマスでした。

そして迎えた新年。頂き物のシャンパンを開けて、ささやかなお正月。添加物の入った食品や冷たいお料理を好まない我が家は、 シャンパンにステーキ、寒いのでお野菜たっぷりのスープ(お餅入り、、笑!)、それにサラダ、チーズ、サーモン、オリーブなど好きなものを並べて。
いつもお正月は自宅で過ごす私は特に変わりはないのですが、コロナ禍で人との交わりを控えて家で過ごすお正月は静かですが寂しいです。

スロヴァキアに住む友人オルガニストから「カテドラルでのジルヴェスター・コンサート、聴いて!」・・と。無観客、オンライン配信での音楽礼拝(ミサ)。 合奏入れたり工夫があって、演奏したことがある2台のオルガン、会堂の響きも懐かしく拝聴。
そういうわけで、今回のクリスマス、ジルヴェスターは、家に居ながら、各地の音楽礼拝(ミサ)を聴くことが出来ました。 バッハが長年オルガニストをしていたライプチヒ、聖トーマス教会のクリスマス音楽礼拝、演奏は 以前にデュオ・コンサートをしたことがある、ウーリッヒ・ベーメさん。クリスマスツリーが美しく飾られ、蝋燭が灯され、 オルガンソロ、そして少ない人数でのコーラス付きのクリスマスオラトリオ(抜粋)、最後はZOOMで収録された 愛らしい少年合唱団の歌声・・映像と音楽の美しさに感動しました。普段は聴くことが出来ない現地での礼拝を、こうして オンラインで視聴出来るなんて!他にも、一昨年演奏したドレスデンの聖母教会からの配信、、などなど各地の教会のクリスマス、ジルベスターの 様子を見ることが、聴くことが出来、あたかも現地に行っているかのような経験が出来、また同僚たちの活躍する姿、音楽を聴けたことは良かったです。 実際、クリスマスに日本を離れるなんて夢のまた夢。いつか叶えたいけれど、、でもコロナ禍が幸いして少しですが叶えられたクリスマスでした。

元旦から、新年に教会で弾くバッハのコラール「In dir ist Freude」(汝にこそ喜びあり)、これはファンファーレ的な喜び溢れ新年にぴったりのコラール、そして 「Over the Raibow」2月に市原愛さんの伴奏で弾かせていただくこの曲など、練習開始。2月11日午後2時から、川口リリアホール。タイトルは 「パイプオルガンで楽しむ親と子のオルガンコンサート」ですが、 皆が楽しめるプログラム、そして愛さんの素晴らしい歌声をお聴きいただける、贅沢なプログラムを用意しています。ぜひ、大人の方だけでもご来場いただきたいコンサートです (無料ですが、事前申込制です)。

毎年、演奏会で訪れた地などの写真を載せた年賀状も今年は写真がない状況に。 鳥たちが囀り、春の歌声が聞こえてくるかのような中でオルガンを弾く女性。その横でオルガンに合わせダンスする人・・この絵を年始のご挨拶に使いました。右は海外の友人にも届くよう、Facebook用に作ったもの。 健康に支えられ、マスクなしに、皆様と笑顔で会える日が来る2021年でありますよう、祈りを込めて。






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