オルガニスト楽屋話

第242話  平和を祈り ---2022.3.1.

梅の花が満開になりました。寒い冬が終わろうとしている時に咲く梅の花は、桜のように華やかではありませんが、穏やかで秘められた美しさがあり、 日本的な美を感じます。 写真は教会近くに咲いている梅の花、練習の帰りに、、。今年は例年より寒い冬でしたが、確実に自然は春に近づいています。
我が家は大きな樹木に囲まれていますが、温かな日差しの中で囀る鳥たちの声も春の声に。今朝もヒヨドリが囀り、先週川辺には白鷺の群れも来ていました。 寒い冬でしたが、その分、家籠り生活も手伝い、温かなお料理、そして冬野菜が一層美味しく感じられ、 寒い中も暖かさを感じつつ、健康を維持して過ごせた冬でした。美味しい有機のお野菜を送ってくださるお弟子さんにも感謝です。

しかしながら、世界中の人々が急拡大するオミクロン株の不安から離れることが出来ず苦しんでいる中、ロシアとウクライナの戦争が始まってしまい、さらに心を痛めています。 何の罪もない人々、幼い子どもはじめ尊い命をも奪う戦いは許されないことです。

ウクライナには行ったことがありませんが、隣接するポーランド、スロヴァキアへは行きました。ポーランドには2回、スロヴァキアは3年前に訪れ演奏しましたが、 本当に暖かく素晴らしいお人柄、お世話になった関係者の方々、親しくなった友人たち、教会とオルガン、そして美しい街並みや自然に思いを寄せます。 次の標的とも言われるバルト3国、リトアニアにはコンクールの審査員で2週間ほど滞在しましたが、オルガン、音楽を通しての知人、友人が沢山います。 リトアニア人でドイツに住んでいるオルガニストも友人にいます。そして、ロシア。モスクワ、そしてヨーロッパ内の飛び地にあるカリニングラード、 慣習の違いに驚きつつも、世界中から集まったオルガニストと心ひとつに、オルガンを通して交わったコンクールでした。

穏やかで平穏であることが普通だった時には感じなったことも、こうした世界状況になると、平和な世界の有難さを感じます。 カザフスタン、ウズぺキスタン、など中央アジアの国々で演奏したのは一昨年、難なく各地を飛び回っていた日々が今となっては信じられないことです。

3月1日から水際対策が大幅に緩和されたと思った矢先、今度はヨーロッパと日本を結ぶ国際線がロシア上空を飛べず、欠航になっているとのこと。 確かに今、ほとんどの便がロシアの上空を飛んでいます。思い出すのは、私の最初のヨーロッパへのフライトは、南回りのスイス航空でした。香港、シンガポールなど 数か所に止まり、その度に隣の席には違う人が乗ってきました。ターバンを巻いた男性や、肌の色の違う人、、20数時間かけてのフライト、 最初の渡欧でもあり、ドキドキでした。これからドイツ留学、という大きな夢を抱えた20代の若き私がそこに居ました。懐かしい。

平和であった世界に、戦争の火花が飛び散り、美しい街が破壊され、尊い命が奪われている現実、悲しい気持ちで溢れます。こんな時に、呑気にオルガンを弾いている気持ちにもなれませんが、 折しも明日からキリスト教会歴ではレント(受難節)に入ります。祈りを籠めてオルガンに向かっています。ドイツでは、ファッシングと呼ばれるカーニヴァル(受難節入る前のお祭りで、 私も仮装パレード、留学中にドイツ人が作った着物風の衣装を着て)の予定が平和集会に変わったというニュース、私も心境は同じです。

我が家のハイビスカスが花を咲かせました。時々、一輪、一輪と咲くのですが、一日限りの命、一日で(持っても2日)萎んでしまいますが、寒い季節に真っ赤で繊細な南国の大輪は喜びです。 ハワイでは最もポピュラーな花で、道端などどこにでも沢山咲き、垣根にもなっていますが、我が家で一輪が開花するだけで大騒ぎになります(笑)。 赤いハイビスカスの花言葉は、「勇敢」だそうですが、繊細な美しさの中に前向きに立ち向かう力を感じます。世界中が苦難の中にありますが、 戦いが終わり、平和で穏やかな世界が一日も早く戻ってきますように、そして世界がひとつになり明るい日が来ますよう祈るばかりです。






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