オルガニスト楽屋話

第246話  まさかのアクシデント ---2022.9.18.

暑かった夏も過ぎ去り、秋の気配を感じられるようになりました。少し涼しくなり、秋らしい装いをと思い、先週、久しぶりにジーンズをと、タイト&スリムなジーンズAbecrombieを 出してきて履き、出掛けた私。帰って来て着替えようとボタンを外した瞬間、指先に経験がないような違和感が走る〜!!あれ、大変だ!!!

右手中指の第1関節が曲がり、力が入らず、下がったままに。気は動転、地球が逆転するかのような、パニック。 落ち着かないと。今日は日曜日、どうしよう救急病院へ行くか、いや、行ったところで整形外科、大怪我ならとにかく(実際、私のとっては大変な大怪我なのですが)、 指の怪我など取り扱ってもらえないだろう。演奏会もあるし、礼拝もあるのに、これでは弾けない〜〜困った。

実は過去に(調べたら2008年)足の指で同じ怪我をしたことがあり、とりあえず段ボールで添え木のようなものを作って 指にあて一晩。翌朝、大きな病院の整形外科へ。

病院で初診のカルテを書きたくも、ペンも持てない(涙)。そして診察。骨には異常はなかったものの、第1関節の上の腱が切れていると。 「装具を付けて全治6週間」というお医者様の言葉に、泣き崩れそうになった私です。

「10月19日、演奏会があるのですが、、」、カレンダーを見ながら「治るかもしれません」とは言いつつも難しい顔をする先生。 「今日は仮の添え木ですが、サイズを計って、来週にはきちんとした装具が出来てきます」。 装具と言う言葉も知らなかった私で、ああ、困った。目の前が真っ暗に。

隣室に入り、装具担当の方から、「取り外しは簡単に出来ますから」と説明を受ける。 もしかしたら弾けるかもしれないと希望を持ち、「指先は出ますか?何とか指先を出すようにしていただけませんか」とお願いする私。 不思議な顔をする装具担当の方。「動かすと治りにも時間がかかってしまいますよ」。 ああ〜もうダメだ、演奏はお断りしないと判断。有り得ないような現実。どんなにご迷惑をかけてしまうことだろう、泣きたい気分。

10月に予定されていた神田キリスト教会での演奏会、主催の方に本当に申し訳ないと謝り、お断りのお電話をしました。演奏会キャンセルなど、あってはならないこと。 もちろん人生初めてです。そんな私に、「今はコロナ禍、キャンセルなどいろいろありますから」とお優しいお言葉でしたが、 演奏会を楽しみにされていた方、本当にごめんなさい。そして演奏会をご準備してくださっていた主催者の方に多大なご迷惑をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます。 礼拝奏楽を代わってくださった同僚たちにも感謝です。ライルの美しいオルガンを弾きたかった、無念でなりませんが、 私の過ちであり、仕方ありません。
Facebookに演奏会のご案内をアップし、怪我のことを小さく書いたら、多くの方からお見舞いメッセージ、ありがとう!靴下を脱 ぐ時に同じように指の腱を切ってしまったという教会の知人から、「お医者様の指示に従っていれば、治りますよ」とアドヴァイスもいただきました。 靴下でも起こりうる怪我なのですね。今後は充分注意しないと。しばし我慢の時を過ごしています。

さて、昨日は川口リリアホールでの「ワンコイン・オルガンコンサート」、近藤岳さんがフランスロマン派音楽三昧で、 生誕200年のフランクを讃えるような素晴らしい演奏をしてくださいましたが、トーク出演は全く問題なく、テープで巻いた指、どなたも気づかずでした。 会場で聴かせていただいたヴィドールの美しい楽章に、うるうる、早く快復して弾きたい思いで一杯に。

ひとつの指先が使えないだけで、私の生活は一変しています。膨大な時間を、オルガンを弾くことに費やしていたこともわかりました。 その時間を、音楽を聴いたり、本を読んだり、勉強したり、調べものをしたり、整理をしたり、こうして久しぶりにサイトを更新する時間もとれ、家族のために 時間も使え、、オルガンは左手とペダルで弾いています。これまで聴こえなかった作品の細部を知ったり、それも面白いです。

盲目でも素晴らしい演奏をするオルガニスト、交通事故で片手を失っても演奏続けていたオルガニスト、私よりもはるかに大きな 逆境を乗り越えて弾いていた先輩、同僚を思えば、私の怪我など大したことはない。長い人生、アクシデントも乗り越えなければ、と 自分を励ましております。右手中指の第1関節だけ固定していれば、体は動かして良いとのこと。
という訳で、皆様、どうぞご心配なさりませんように、元気な証に、昨日の楽屋でのショット、私としては珍しいスカート姿(トーク出演でしたので)、 自撮りですがアップしました。






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