オルガニスト楽屋話

第263話  ストラスブール・オルガンランド ---2024.8.20.
7月8日、羽田空港を出発、フランクフルトから列車でストラスブールへ。ストラスブールは、 アンドレアス・ジルバーマンAndreas Silbermann(1678-1734、ドレスデンなどで名器を残しているゴットフリートの兄) はじめ美しいオルガンが沢山あり、現在も多くのオルガン製作家が工房を構えるオルガンランド。ストラスブール、そして その界隈の有名な歴史的オルガンを、今回はオルガンの生徒さん方と一緒に訪ねてきました。

8日間滞在したのは、イル川沿のアパートメント。カテドラルからも徒歩5分、どこの教会からも徒歩圏内、スーパーマーケット、 パン屋さんへは徒歩1分、オーガニックのスーパーもすぐ近くというとても便利な立地にあり、毎日オルガンを弾いたり、聴いたりしつつ、 朝市などで地元の新鮮な食材を買い、お料理も楽しみました。お野菜、果物、そしてチーズやヨーグルト、とても美味しい。パンはドイツ国境にも 近く、ドイツのパンも手に入る。そしてワインはもちろん、アルザスワイン。 自炊のいわばプチ・フランス生活。気候も暑くもなく、寒くもなく快適。時間があれば、 世界遺産の美しい街を散策したり、ショッピングしたり、それは楽しい日々でした。

7月13日には、EbersmunsterのA.ジルバーマン製作のオルガンを弾く機会が与えられました。 翌日訪れたマルムティエのオルガンとともに、オルガンの書物、教科書には必ず出てくる世界的に有名なオルガンです。 学生時代から書物の中で何度も読み、目にしてきた楽器を弾けるとは、なんて幸せなこと!

しかしながら、人口500人の村。最寄り駅のエーパーハイム駅から2.5キロ、公共の乗り物はありません。徒歩30-40分。 GoegleMapを見て、歩くことを想定し、メンバーには「ハイキングのつもりで、歩きやすい靴を用意して」と言っていたところ、 教会の方、G.Adamさんが駅まで迎えにきてくださるというメール。何て親切で有難いこと。男性だか女性だか、 年齢も一切わからないけれど、アダムさんが迎えに来てくださることに。

駅に降り立ってみると、畑の中の無人駅。駅員さんなどはいない、降りたのも私達4名だけ。反対側のプラットホームで手を振る、一人の男性。 アダムさんでした。車に乗せてくださり、教会へ案内し、鍵を渡され「どうぞ、お弾きください」。美しいオルガンに感激、感動。

帰りも、アダムさんが駅まで送ってくださったのですが、なんと、数羽のコウノトリと遭遇!!綺麗でした。幸せを呼ぶというコウノトリを初めて見た私、これまた興奮!!

翌日の7月14日、パリ祭の日には、Marmoutierマルムティエのアンドレ・ジルバーマンと息子のヨハン・アンドレアス・ジルバーマンに よって製作され、オルガンの大部分が18世紀のものが残っているという貴重な楽器での演奏会があり、これはどうしても聴きに行きたいと。

この日は乗り換えるバスがない。仕方ないので、途中のストラスブールから列車で約30分のサヴェルネという街まで列車で行き、 そこからタクシーで行くことに。駅にタクシーがなければ、Uber で呼べば良いと思い、時間に余裕を持って出かけて行きました。 さて、駅に着くと、タクシーなど一切ありません。ならば、Uberとなり、アプリで呼ぶのですが、「探しています」、「しばらくお待ちください」、 「いま近くに車はありません」、を何度かくりかえしていると、「40分で参ります」これならばまだ間に合うと思い、待つことに。しかしながら時間になっても、 車は来ませんでした。駅やキオスクにも尋ね、街のタクシー会社2社に電話するものの、「車はありません」と。駅前の木陰に集まって話をしているおじさん グループにも助けを求めるも、タクシー会社の電話番号を教えてくれるのみ。そこへはもうかけたから、、と困り顔の私。

すると「それでは僕が送りましょうか」と。「車を取ってくるから待っててください」。なんと有難いお言葉。 待つこと10分、どうやら、家まで車を取りに帰った様子。そして車で、マルムティエの教会まで送ってくださいました。 結局、1時間以上、駅前で時間を費やしてしまい、それでも演奏会開演間も無く教会へ滑り込み、演奏会を聴くことが出来ました。 パリ祭に合わせ、ラ・マルセイーズの旋律を用いた曲を2曲、歴史的な名器で忘れられない演奏会になりました。

Uber を当てにしてはダメ、と思いましたが、帰りは予約した時刻にきちんと配車され、帰途につけることに。

ストラスブールへ帰ると、トラムも途中駅で降ろされ、何やらすごい人。日が暮れると、花火が始まり、満天の空に、ドンドンという大きな音を立てて、 色鮮やかな花火の祭典が始まりました。カテドラルは、通常のライティングだけでなく、プロジェクトマッピングの演出まで。 何度も訪れているストラスブールですが、こんなライティングのカテドラルは初めて。これまた忘れられないパリ祭の日、7月14日になりました。

滞在中の一日は、Obernaiオベルネ、という街を訪ねました。オルガンもですが、ここはアルザスワイン街道の街、街並みもとても可愛らしく、 街は葡萄畑に囲まれています。ここでは、アルザス・ワインのテイスティングも。白ワインが中心ですが、赤の美味しいアルザスワインがあることも知りました。 おそらく、日本では手に入りにくいかと。傾斜のある街、高台にまで登り、随分歩きました。

お腹を空かせて、フレンチレストランに入りに、私がこの日選んだのは、ウサギ。もちろんアルザスワインと共に、多くの思い出が出来ましたが、 やはりフランス、美味しいお味も忘れられない思い出です。

オルガンの写真と共に写真の ページにアップしましたので合わせてご覧いただけましたら嬉しいです。






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