オルガニスト楽屋話

第27話 オルガンとともに過ごす時間 ---1999.5.27.

”今日はお仕事?”・・ 日頃の会話の中にしばしば飛び出すこの質問には、 困ってしまいます。日常の大半の時間をオルガンと過ごす私なのですが、この 練習時間を仕事と考えるべきなか、難しいところです。 演奏活動を仕事とする私にとって、演奏会そしてそのための練習時間も確かに<仕事>と言えるのかもしれません。 しかし、強制され、束縛された感じは全くなく、働いているというよりはむしろ 遊んでいる感じ・・私にとって楽しい時間なのですから、何と答えるべきか戸惑うのです。 楽器を演奏することを、play(英)、spielen(独)と、いずれも<遊ぶ>という言葉で表すことに、大いに納得出来ます。

”練習は大変ね”・・ この言葉にも、うーん。 朝起きて、今日は一日オルガンだけのために過ごせる・・こんな一日の始まりはとっても幸せ。 もちろん技術習得、難しいところを繰り返し練習するといった作業もありますが、 ひとつずつ克服していくところに小さな喜びが生まれます。それより時間の大半は オルガンと向い、毎日発見、研究の繰り返しです。いかに楽器を美しく歌わせるか、 作曲家が楽譜に託した言葉を追求しつつ、私の音楽にする・・終わりの無い課題です。 そして本当に集中でき音がよく聞こえた時、自分に納得のいく音や音楽を見つけた時、そしてそれを創り出せた時、 充実した時間を過ごしたと満足感を覚えるのです。

練習のために、教会やホールなど、毎日色々な所へ出かけていきます。 これから弾く曲や弾きたい曲の楽譜をバッグに入れるのですが、 時には持ちきれないほどにもなります。車から重そうにおろす私の姿を見て、まるで”動く図書館ね”と言われたり・・ 紅茶やハーブティーなどをポットに入れ、さあ出発です。 多くの時間を過ごしている大森めぐみ教会 (・・シュヴァンケデルのフランスバロック 様式のとても美しいオルガン・・) まで、10分。すみだトリフォニーホールへは 首都高速で都内縦断・・大きな楽器に触れると、また多くのインスピレーションが 沸いてきます。 我が家には、高校1年の時に買ってもらった小型の電子オルガンがあります。 いつ手放そうかと思いつつも、譜読みをしたり、冬の寒い時や夏の暑い時、 突然お葬式が飛び込んだ日(教会)、早朝、深夜の練習(音量が落とせるので) には何とも便利。パソコンの隣にあるのですが、さてどちらの椅子に座ろうかな・・ 誘惑されたりします。

そして練習の合間にはプールへ。不自然な姿勢で楽器に向い、固い椅子に長時間 座っているのですから、時には体をリラックスさせてあげたいと思うのです。 体が軽くなり、力が抜け、オルガンの鍵盤に入る指の感触まで変ってくる水泳は とにかく効果大! ただ今クイックターンの練習に夢中。私の最も苦手&嫌いだったはずの 水泳が、ようやくここまでになりました。くるっと・・上手く回れたと思ったところが、 足は壁からまだまだ遠く、これでは上手くキックが出来ない・・ 失敗です。悔しい!とまた泳ぎ始める私・・これも職業柄得た気質なのかしらと 思わず笑ってしまうのです。

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