オルガニスト楽屋話

第42話 新しい世紀を迎えて ---2001.1.1.

明けましておめでとうございます。新しい年をいかがお迎えでしょうか。

私は、サントリーホールのジルヴェスターコンサートのカウントダウンのお役目で、オルガンを弾きながら新年を迎えました。 100年に一度の世紀の変わり目を、どこで、誰と、何をして迎えようかとこだわったものの、結局 オルガンのところでとなりました。でも私らしかったかもしれません。

クリスマスから年末にかけて7公演と、東京のホールを駆け回る、過密なスケジュールでした。 クリスマスコンサート本番の後に、オーケストラのリハーサル場へと駆け込んだり、曲芸的なこともしてしまいました。 5つの公演は同じプログラムと甘く考えていたのですが、機械のように動けるものでないことが良くわかりました。 やはり演奏は、生身の人間の行為なのですね。 そして聴衆との間に毎回新しい関係が生まれ、演奏が行われるということを、 まさにクリエイティヴな仕事だと、痛感しました。

デビューして10年以上が過ぎました。若さとやる気で、ひたすら 走り続けている時期もありました。けれども全力疾走ばかりでは、そのうち息も絶えてしまいます。挑戦する意欲と 前向きな姿勢は保ちつつ、これからは自分自身に磨きをかけ、人の心にも豊かさを伝えていけるような余裕を持てればと 思います。ひとりの人間として成長し、自分の人生も豊かなものにしながら、演奏活動を続けていきたいものです。

クリスマスに、ふらっと立ち寄ったお店で、自分へのプレゼントを買ってしまいました。赤いアウディです。 突然の行動に周囲は驚いていましたが、さらに驚かせたのが “・・88” というナンバー。 縁起など気にしない私にはあまりピンとこなかったのですが、末広がりで縁起の良い数とのこと。 オルガニストは楽器を持ち運ぶ必要はないのですが、オルガンの所へと移動が多いのです。 これから練習場、ホールへと常に私のお供をしてくれるのですから、縁起が良いのならばそれにこしたことはありません。

新しい世紀、気持ちも新たにスタートです。

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