オルガニスト楽屋話

第46話 楽譜の中の音符達♪ ---2001.5.23.

本を読むよりも、楽譜を見ている時間の方が長い私です。 作曲家が残した楽譜は、演奏家にとって貴重な資料であり、 それを“音”に再現していくのが我々の仕事です。 作曲家の心を探る、創作活動と言えるでしょう。

まずは楽譜を・・音譜ばかりでなく、調子やテンポ、 強弱の指示など、隅々まで丁寧に読みます。 出版の課程で、余計な注釈などが加えられたものではなく、 原典を選ぶのは、より作曲家の意図したものに近いものを 知るためです。それから、作曲家のこと、その音楽が生まれた時代の音楽的 習慣、楽器のこと、さらには美術や文学などの文化、また社会的背景を 知ることも、その音楽に近づける手助けになります。 その後、奏者の解釈が加わり、自由に表現された音楽が生まれて きます。そこには音楽性とテクニックが問われます。

五線譜に書かれた音符は、音の長さと高低を示します。 それから休符という休みを示す記号もありますが、音のない 時間も音楽においては“音楽”になります。 ご参考までに、ピアノの楽譜は2段で書かれていますが、 オルガン譜は3段で、一番下の段には、ペダル(足)で弾く パートが書かれています。

さて、その音譜ですが、同じ八分音譜でも、長めの、短めの、 重い、軽い、強い、弱い、固い、やわらかい・・などと 多種多様です。音楽の流れの中で、様々な性格を持ちます。 書き示されていない微妙なニュアンスを、楽譜から感じとり、 表現する・・そこには音楽的センスと創造性が必要とされます。

技術的な練習もですが、どんな音色、どんな性格の音か、 それぞれの音符に息を吹き込んであげるような作業は大切で、 むしろそちらの方に時間を費やさなくてはなりません。 また、単に譜面を追いかけているばかりでなく、感受性も 磨いていかなくてはならないと思います。

違う文化圏に身を置くと、私は新しい刺激やインスピレーションを 得られます。言葉の響きも、音楽と多いに関係します。 南仏プロヴァンスで、ゴッホ、シャガール、マティスなど多くの 画家たちが創作活動に励みましたが、芸術家の感性を刺激する 何かがあるのでしょうか。 来月私は、プロヴァンス地方のローマ時代の遺跡や ロマネスク様式の教会、また美術館を訪ねたり、オルガンを聴いたり、 栄養補給してきたいと思っています。丁度、ラヴェンダーの季節、 コート・ダジュールの明るい太陽も楽しみです。

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