オルガニスト楽屋話

第49話 バイエルンの森でのコンサート ---2001.8.17.

7月31日、フランクフルトに到着。留学時代からの友人でオルガンビルダーのVleugelsさんが、 空港まで迎えに来てくれました。まずは車で約1時間、彼らの家へ向いました。 当時生まれたばかりだったお嬢さんが、私より背が高くなっていたのには驚きました。 彼らの家でのんびり過ごし、翌日、今回の演奏会のあるチェコとの国境に近いRundingという町へ 向いました。アウトバーンを時速200km以上の速度で飛ばします、さすがドイツ。 こんなにスピードを出せるのも、優先権がはっきり決まっていて、車線変更のマナーが 守られているから。最近は“割り込み”の順番まで規則になったそうです。

途中、彼がオルガンを製作している教会で、1時間ほど打ち合わせがあるというので
立ち寄ったのですが、待たされること3時間。一体どうしたのかと思っていたら、 オルガンケースがバルコニーより出っ張りすぎると州からクレームがきて、 形を変更するように申し出があったとのこと。すでにケースはバルコニーに設置され、パイプを まさに入れようとしている段階でのこの変更はありえないと、大反論していたそうです。 明日はコンサート、私は一刻も早くオルガンを弾きたいというのに、午後4時半、教会に着きました。 するとRosenkranz(お祈りの時間)が始まり、さらに待たされること1時間。5時半に ようやくオルガンを弾き始めることができました。

教会はモダンな建築で、オルガンは36ストップ。決して大きな楽器ではありませんが、 良く鳴り、美しく歌うストップばかりで、その響きは天井の高い教会を満たします。 音色づくりもはかどりました。ただペダルが通常弾いている位置より半音ほど高く、 これに慣れるのに少し時間がかかりました。この地方には多いとのこと。 たったの半音ですが、随分違った感じがするものです。午後10時、オルガンにも慣れ、翌日に備え ゆっくり夕食をとることにしました。

さて翌日、演奏会の時間になると、この静かな町の教会に沢山の人々が集まり、ほぼいっぱいに なりました。響きの良い教会での久しぶりの演奏で、私自身も楽しみながら、演奏することが 出来ました。音が思いのままに飛んでいく感じでした。暖かい拍手は、異国の地で 特に嬉しく感じます。“Gratuliere!”(おめでとう)と聴いてくださった方々から 気楽に声をかけていただけるのもありがたく、日本ではない場面。 その後近くのレストランで、近隣のオルガニスト達などとワインを飲みながら話もはずみ、 美しい緑に囲まれたバイエルンでの演奏会の夜は終わりました。

(次もドイツでの話が続きます、お楽しみに)

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