オルガニスト楽屋話

第51話 おめでとう!金沢 ---2001.10.7.

羽田から飛行機で約1時間、小松に到着。空港からタクシーで 約35分、途中日本海沿いを走り金沢へ。「石川県立音楽堂」は JR金沢駅前に今秋開館。 1500名収容のホールに、ベルリンのシュッケ、69ストップ (4段鍵盤とペダル)のオルガンが設置されました。 スキャナーを買った私は嬉しくて、 写真付で少しご報告させていただきます。

今回は、このホールを本拠地とするオーケストラ・アンサンブル金沢の 定期演奏会、また開館記念の一環でもあり、 大阪フィルハーモニー交響楽団との合同コンサート、指揮は井上道義さん。 私の出演はサンサーンスの「月桂樹」と、R.シュトラウスの 「ツァラトゥストラはかく語りき」。


さて興味津々のオルガンですが、まずは扉を開けようと思うと、 鍵穴の高いこと。やっと手の届く高さはドイツサイズ。
扉を開けると、美しい漆塗り、これはなんとも日本的。桜、もみじが描かれていて、 大変高価だそう。


譜面台も漆。
左上のモニターで指揮者を見るのですが、ステージに近いせいか、オーケストラの音も良く聞こえ、アンサンブル しやすく満足でした。


さてオルガンですが 8’、ペダルには16’がたくさんあり、しかもそれぞれが個性を持っている。 全体にこれまでのドイツのオルガンに多い「きつい」「固い」音 は少なく、暖かく柔らかい音。とりわけ主鍵盤のプリンツィパルは美しく、 2本のパイプを鳴らす仕組で、プロスペクトを飾っています(写真左)。 もしかしたらバロックのプレノには物足りないような。 スペイン風トランペットは演奏台の左右に分かれて配置(写真右)。 まだ客席で聴いていませんが、 全体的にリード管の音色は、ほかのストップに比べると幾分粗雑に 感じられました。 けれども天井は高く、美しく響き、またとても演奏しやすいオルガンで、 弾いていて楽しくなる楽器です。


さてこの金沢のオルガンの装置について、 ご紹介します。


鍵盤横の箱の中に(写真右)、上から「風圧加圧機能」・・第2鍵盤、第3鍵盤の風圧を上げる装置 (2つの鍵盤だけ。これをどのように使用するのかまだ疑問)。 鍵の下は、「全体風圧減圧機能」・・このつまみで、オルガン全体の風圧をコントロール。今回は実際に試す時間は ありませんでした。 その下にメモリーカード挿入口があります。カードは大変小さい(4cm×3.5cm) のですが、 500コンビネーションのデータを保存できます。

左の写真は「クラスター」機能のスイッチで、弾いた鍵盤を下ろしたままに。 ただし第3鍵盤のみとのことで、その使い方はいかに?このクラスター機能と 風圧変更装置は、現代作品などかなり特殊な場合しか用いられないでしょう。




最近よく見かける自動演奏装置(ミディのインターフェース?)、シーケンサーとフロッピーです。 自分の演奏を客席で聴き、音色やバランスを確認することも出来ます。


楽屋のほかに、オルガンバルコニー裏に「オルガニスト専用の控え室」が・・。 モニターテレビ、エアコン、机が置かれた部屋で、 ありがたい。

まだまだ時間が短くて、楽器のすみずみまで知ることは出来ませんでしたが、 来月はここでソロリサイタル・・もっと楽器に近づけるような気がします。 おめでとう!金沢。

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