オルガニスト楽屋話

第62話 オルガン物語を振り返って ---2003.3.19.

昨年から始まった大阪いずみホールでのコンサートシリーズ「オルガン物語」は、先日第3回目の 演奏会をお陰様で盛会のうちに終えることができました。会場にお出かけくださいました方には、心よりお礼申し上げます。 演奏する立場ですと、出演の依頼を受け、 プログラムを決めれば、あとは準備をして(これには時間はかかりますが私一人の作業です)、途中連絡が入ったりはしますが、 当日あるいは前日に会場へ行けば良いのです。 しかし企画する立場になりますと、出演者の選定など その準備は1年半位前からスタートします。音楽ディレクターの礒山雅先生はじめホールのスタッフの間で検討され、 日時が決定し、演奏者からプログラムをいただき、タイトルを決め、 チラシを校正、そして曲目解説はじめいくつかの原稿を書く作業などが続きます。演奏会直前までホールのスタッフと 連絡が頻繁にかわされます。 一人でも多くの方に聴いていただきたいという思いから、新聞記者に面会したり、宣伝にも力が入ります。 ひとつの演奏会に対して、自分が演奏するよりも多くの 関わりがあり、思い入れがあるように思えます。そのせいか「オルガン物語」が終わる度に、安堵感と充実感を 覚えます。また舞台裏のスタッフのお働きやご苦労を知ることにもなりました。

コンサートの中にはトークの時間があります。オルガン音楽により親しんでいただくために、何をお伝えしたら よいか毎回思案しています。 オルガンは日本人には身近でなく、構造も複雑、また歴史が長いだけに様式は多様なので、 お話することは沢山あります。これからもコンサートの流れにふさわしいテーマを見つけ、様々な角度から オルガンをご紹介していきたいと考えています。それから毎回会場でのアンケートに寄せられるオルガンや演奏などついての ご質問を、トークの中で、それからウェブ( オルガンQ&A)でお答えしています。

右の写真は第1回、ブライアン・アシュレーさんとのトーク場面です。「フレンチはいかが?」と題して、 バロックから近代までのフランス音楽をたっぷり聴かせていただきましたが、トークではご本人がお得意、また大好きというフランス音楽 の魅力についてお話を伺いました。この時はアシュレーさんのご希望で、座ってのトークでした。日本語が達者でユーモラスなアシュレーさんとは、 ドイツ留学時代のクラスメイトでもあるので、話ははずみ、会場は和やかな雰囲気になりました。


第2回は「笛たちの饗宴」と題し、フルーティストの佐久間由美子さんにご出演いただき、私はその伴奏をさせて いただきました。アンサンブルの魅力もお伝えできたのではないかと思っています。オルガンも「笛」が鳴っているということを強調し、 トークでは小さなオルガンの模型を使って、パイプへ風が送られる原理を見ていただき、音が鳴る 仕組みを説明をしました。コンサートの様子は<メッセージ第58話>でも 触れさせていただいています。また佐久間さんとのトークはいずみホールの ページに掲載されていますので、興味のおありの方はご覧ください。

→この2枚の写真はクリックしますと、大きな画像でご覧になれます。
(写真撮影:樋川智昭/提供:いずみホール)


第3回は「バッハへの軌跡」と題し、アンドレア・マルコンさんにご出演 いただきました。趣の違ったイタリアと北ドイツの音楽を聴き比べ、これらの 音楽的要素を融合し、独自の書法で完成したバッハのルーツを辿りました。 滅多に聴くことのないイタリアの音楽、それからトークの中でのイタリアのオルガンのお話は興味深い ものでした。コンビネーションは使わずに、すべて手動でストップを動かすというこだわりぶり・・ 古楽器としてのオルガンの魅力を存分に聴かせていただきました。 本物志向のプログラムで 突き進んで良かったと、良いものは人は心を動かすものだと、また改めて痛感しました。


毎回、コンサートの後には私のお弟子さんが、打ち上げ会を企画してくれました。 演奏者を囲んで楽しいひと時です。卒業した教え子たちが集まってきてくれるのも嬉しいもの。 写真はその様子です。若い女性はみな私のお弟子さんです。

マルコンさんを囲んで、右側はアシスタントの勝山さん。
左からマルコンさん、マネージャーの中尾さん、久保田先生、後ろは早野さんと谷浦さん。


左から関さん、片桐さん、私、そして大津寄先生。
大日向さんと川上さん。


左から前田さん、片桐さん、追中さん、オルガニストとして活躍中です。
左は今年卒業の早野さん、右は去年卒業した大橋さん。

1年に2回のペースで開催されています「オルガン物語」の第4回は、8月28日に「いずみホールのオルガンは 日本一!?」と題し、昨年までオルガンコンサートシリーズの企画、ナヴィゲーターをされていた 礒山雅先生のお話、そして私の演奏でお届けします。プログラムは、いずみホールのオルガンの 魅力を最大限に引き出すような「マイ・ベストセレクション」で。 第5回目(来春)の準備も進行中で、その回はナヴィゲーター役で出演致します。
日本には1台しかないアルザスのケーニヒオルガンは美しく、魅力溢れる楽器、 ホールの響きも素晴らしく、オルガンを聴くには全く贅沢な空間です。これからも皆様に満足していただける コンサートをつくっていきたいと意欲に燃えています。




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