オルガニスト楽屋話

第67話 いろいろありました!香港公演 ---2004.2.25.

2月19日から5日間、香港へ演奏旅行に出かけてきました。無事帰りました〜!とご報告したいところですが、 我が家に着きヤレヤレと思うや否や体に異常を発見!体が浮腫み、足はまるで象!パンパンに膨れ上がっているで はないですか。青ざめた私は、スーツケースを玄関に放り出したまま、お医者様へ直行。検査の結果、体には異常はなく、 あちらでの食事の香辛料か何かに私の体に合わないものがあり、反応を起こしたようです。全身水ぶくれ状態、体重4キロ増。 でもお食事は何を食べても「とてもとても」美味しかったのですよ。こうしたハプニングがありましたが、香港の様子お伝えします。

2月3日から3月7日まで“ Hong Kong Arts Festival”(香港芸術祭)が開催されています。今回はその一環で、 2月21日に香港文化中心(カルチャーセンター)コンサートホールで催された、香港フィルハーモニー交響楽団と “サン=サーンスの交響曲第3番”の演奏会。ワインヤード型(客席がステージをぐるりと囲んでいる) のホールには、アジア最大級規模(93ストップ)のリーガー・オルガンがあり、一度弾いてみたいと思っていた楽器でした。

成田を発ち5時間の飛行は、機内食とともに飲んだワインの酔いが醒めるか心配になるほどあっという間でした。 飛行機を降りると「Keiko Inoue」という紙を持った男性の出迎えがあり、新しく広い空港を案内され歩いて行くのですが、 混雑している入国審査も優先的に通され、空港職員の丁寧な対応、そして外には運転手付きの高級車が待機・・・ 香港政府主催という重みに気づき、私にも緊張感が。滞在中はスーザン(写真下)というマネージャーが 傍に付き添ってくださるなど、全てが完璧に手配、準備されていました。


さて翌日、メールでの連絡で私は“指揮者のイオン・マリン氏とピアノのあるリハーサル室で打ち合わせ” のつもりでした。スーザンがホテルに迎えに来てくれ、ホールと同じ建物内の部屋へ案内してくれた のですが、そこにはオーケストラ全員がスタンバイしているではないですか!今日はオケ合わせだったの?と あわてる私。当初、香港フィルから「リハーサルがゲネプロ(本番の日のリハーサル)だけしかとれないけれど、 この条件で弾けますか?」という問い合わせから始まった仕事だったので、どうして?! その後、「ピアノはあちらです」と言われ、その時はじめて私の“大勘違い”に気づいたのでした。 オルガンでのリハーサルが当日だけ、そしてリハーサル室にオルガンがないからピアノでということだったのです。 こういう場合日本ではレンタルの電子オルガンを使い、ピアノでというのは経験のないことで 想像さえできなかったのです。えっ!すでにチューニングが始まっていました、弾くしかありません。

香港フィルはアジア系の人もいれば欧米人もいて、常に数ヶ国語が飛び交っているそうです。 ホールへは「台裏」と書かれた楽屋口から入るのですが、“台裏”とはバックステージのこと。 余談ですが、“客務中心”は Custom Service Center、“時代広場”はTimes Square・・・など読めないけれど 意味は通じて面白いです。楽屋にはバナナ、ミネラルウォーターのほかにチェリートマトが 一箱・・・トマト?!香港では一般的なのでしょうか。

オルガンにはすぐに慣れ、舞台のスタッフも気が利き機敏で東京のコンサートホールとあまり変わりなく、 演奏に集中できました。初めてのアジア公演、サン=サーンスを香港の聴衆の前でも演奏でき感激、 また客席からの熱い反応も嬉しいものでした。

演奏会前後の自由時間、街を散策しましたが、国際色豊かで、活気があって、人々も生き生きとしていました。 香港は16年前に来て以来2度目ですが、近代的に美しく変貌したことには驚くばかり。今の日本にはないような元気があります。 斬新なデザインの建物や近代的な設備、それとは対象的に昔ながらの下町のような庶民的な街並み・・・ 2つの顔が隣り合わせに共存する面白い街です。

演奏旅行中に苦労するのは食事の時間です。日本では早くにお店が閉まってしまうし、ヨーロッパでは食事のできる 時間が限られています。その点どんな時間でも食べられ、お店もたくさんある香港は楽でした。それにしても 朝から深夜までワイワイ、ガヤガヤと賑やかに食事を楽しむのですね。何を食べても美味しく、飲茶、甘味、 それから地元の人と同じように朝はお粥屋さんへも足を運び、香港の味を堪能してきました。

さて今回出演料はてっきり“香港ドル”だと思っていたので、日本で両替していった現金はなるべく使い果たし、 買い物は最終日にと密かな計画を立てていました。演奏会の日、ホールへ向かう時の所持金は20香港ドル、 日本円にするとなんと僅か300円!でした。さて終了後いただいたドルを見てびっくり、“米ドル”ではないですか! あの英語と中国語が混じった分厚い契約書にもっとよく目を通すべきでした。翌日は日曜日で銀行もお休み、 予定外の節約モードになってしまいました。

楽しみあり、失敗あり、ハプニングありでしたが、街も人も活気のあった香港からは元気をもらえ、 初めてのアジアでの演奏会は思い出深いものになりました。








Index