オルガニスト楽屋話

第70話 バルト三国オルガン紀行 ---2004.9.21.

バルト三国は13年前にロシアの支配下から独立しましたが、かつてはドイツ、デンマーク、スウェーデン、ポーランドなどの国々の 支配下にあった歴史があります。その時代に造られた街並や古い建築には貴重なものが多く、それぞれの首都(タリン、リガ、ヴィリニュス) は世界遺産にも登録されています。今回はこの三都市を訪ねました。緯度が高いので、夏は午後11時頃になってようやく日が暮れます。 日中は暑いこともありましたが、乾燥して25度前後という気候は快適でした。けれども冬は寒く、暗く、厳しいそうです。

サンクトペテルブルクからバルト三国への旅は始まりました。通貨はクローネ、ラッツ、リタス、そして帰りに寄ったフランクフルトを 含めると今回の旅では6種類の通貨を使うことになり、かなり混乱しました。国の大きさは北海道の6割、8割という小さな国ですが 言葉も違い、そのうえ方言もあり、同国人でもわからないというのです。

さてEurobus(国際バス)でエストニアの首都タリンへ。途中、国境では乗客全員が下車させられ、スーツケースなど荷物も全て 一旦バスから降ろし、パスポート検査、そして4回もの厳重なチェックがあり、その度に止まり待たされました。この「待つ」という 感覚ですが、日本人には相当な辛抱が必要です。サンクトペテルブルクからタリンまでの距離は361キロですが、道路は一車線。 国境での待ち時間も合わせると7時間半かかる長旅でした。

タリンの旧市街は城壁に囲まれ、徒歩で歩ける小さな街。ドイツの街にも似ていて、ロシアの大都会で少々疲れた私はほっとしました。 ロシア正教、カトリック、プロテスタント教会があり、ロシア正教以外の教会には必ず立派なオルガンがありました。 日曜日にはプロテスタント教会の礼拝に出席、聖歌隊は2階バルコニーでマンドリンのような弦楽器アンサンブルの伴奏で歌い、 コーラスが礼拝をリードしていました。教会に響く歌声はとても美しく、さすが合唱の国だと痛感しました。丁度オルガンフェスティバルも 開催中で、2晩は演奏会へ。大聖堂にはロマン派の名器Ladegast Sauerオルガンがあり、ラウクヴィック氏のエネルギッシュで迫力溢れた 演奏で聴けたことは幸運でした。

さてここでちょっと困ったのはトイレ事情。変な話なのですが、使用した紙は流さずにゴミ箱に捨てる習慣らしいのです。 確かに大きなゴミ箱が置かれていましたが、結局私は最後まで見ぬ振りを。

タリンからバスで5時間半、ラトヴィアの首都リガに到着。修復中の建物や工事中の道路の多いこと。 これからますます近代的で整備された街へと発展していくことが伺えますが、残念なことに大きなオルガンのある大聖堂も修復中でした。 しかしここにも沢山の教会、立派なオルガンがありました。街の近代化は進んでいましたが、広場には朝早くから一日中座って 手袋を編んでいるおばあちゃんがいました。手の混んだ美しい柄の手編みで、おばあちゃんの優しい笑顔の思い出に買ってきました。

リガから300キロ、リトアニアの首都ヴィリニュスへ。緑豊かで落ち着いた、素敵な街です。ここはカトリック教徒が多いそうですが、 隣から隣、様々な宗教の教会が連立しているのには驚きました。旧市街から歩いて15分、少し離れた場所にある聖ペテロ=パウロ教会ですが、 一面が漆喰彫刻で覆われた会堂内に入った時、その美しさに圧倒されました(上の写真です)。

余談になりますが、私の契約するプロバイダーはバルト三国にアクセスポイントがなく、16日間もの間ネットから離れてしまうと 心配していたのですが、現地に行ってみると、どこにでもインターネットカフェがあり、簡単にアクセスできました。 ネット環境は進んでいるようです。中には日本語フォントのあるPCもあり、私が使っている姿を見てお店の人はご自慢そうでした。

食事はドイツ料理にも似た、お肉中心でじゃがいもの付け合わせ・・・といった素朴なもので、とりたてて洒落たお料理では ないのですがなかなか美味しかったです。

いずれの街も教会が多く、またたくさんのオルガンにも出会え、良い旅になりました。リトアニアは麻の産地でもあるそうで、 最後にヴィリニュスから連れてきた麻でできた手作りのウサギもご紹介します。 写真のページへもよろしかったらお尋ねください。




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