オルガニスト楽屋話
第76話 新年を迎えて ---2006.1.1.
新しい年、いかがお迎えでしょうか。毎年のことですが、12月が終わるとホッと一息です。川口リリアホールでは
C.カーリーとデュオ・コンサート。楽しいお人柄で、そばにいるといつも笑わせてくれます。ソロあり
連弾あり、のコンサートでした。連弾はオルガンの長椅子に並んで座り演奏するのですが、彼はとても大柄なので、
私は「はじき飛ばされそうだった」、また横にいると「細く見えた」そうで、それはラッキーでした。
世界一周するようなコンサートツアー中で、今回はリリアホールでのこのコンサートが日本で唯一の公演でした。
お人柄だけでなく演奏も楽しいので、私はあえて別路線で・・・リストの重厚な響きの音楽、“「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」による変奏曲”を選びました。バッハの受難曲にも使われている、
嘆き、悲しみを表現したモティーフによる変奏曲ですが、苦しみや苦悩に満ちた暗い音楽がしばらく続いた後、
エンディングに近くなりようやく明るい響きに変わり、神様は大きな力で私たちを守ってくれる、という讃美歌が力強く歌われる曲です。
この時、オルガンはフルパワーの大音響になり、重厚、荘厳な響きで曲は終わるのです。
リストは娘さんを亡くした時にこの曲を書いたそうですが、メッセージが沢山込められた、力を与えてくれる感動的な作品です。
私自身もこの曲を弾いていて、力強いオルガンの音色から生きる力と勇気を与えられました。
リハーサル中でしたが、こんなことは初めてで、自分でも驚きました。こうした響きはオルガンだからこそ
奏でられるものかなと。
今月は親しくさせていただいてる方の息子さんが、交通事故で亡くなるという
信じられない悲しい出来事もありました。33歳という若い息子さんを天に送られるご家族の
お悲しみはいかばかりかと心痛みます。大勢の方が参列されたお式でしたが、
息子さんを天にいます神様の身胸にお送りし、地上に残されたご家族の方にお慰めとそして励ましの気持ちをこめて演奏しました。
コンサートでの華やかな拍手喝采も嬉しいですが、こうした時に私が用いられることこそ、私がオルガンを弾いている
意味があるのではないかと思うのでした。
連日続く日フィル恒例の「第九とパイプオルガン」公演のスケジュールの間、クリスマス・イヴには
私がオルガニストを務める大森めぐみ教会でのキャンドル・サービス礼拝で演奏。ずっと忙しく走り回ってる私ですが、
クリスマスは希望の光が輝く日であるというメッセージを聞き、心静かにクリスマスを迎えることができました。
教会での奏楽は心を落ちつかせることのできる時間です。
今年最後のお仕事は東京芸術劇場でした。全て無事終えやれやれと、ほっとした気持ちで、首都高速の銀座あたりを走っていた時です。
飲んでいた咳止めの薬のせいか、疲れのせいか、眠いな、、、と。その時です、ハっ!と気づくと車は壁に向かって走っていく
ではないですか!あわててハンドルを逆方向にきりました。幸い反対車線に車はなく、縁石にホイルがぶつかり
グチャグチャに壊れただけの事故ですみましたが、こんなことはもちろん初めて、
大事故になった可能性もあると思うと今でも身の毛がよだつような思いがします。
私がオルガンを弾くことによって用いられることは、喜びです。それは私がオルガンを弾いていることの
原点だと思います。オルガンの音色に励まされたり、パワーをもらったりしながら、また今年もこの楽器と
共に生きていきます。喜びや感動を与えられるよう、私自身にも磨きをかけ、美しく輝いていけることを目標に
頑張ります、今年も応援していただけたら嬉しいです。
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