第79話 ブリュッセルにて ---2006.4.25.
オルガンはGrenzingの4段鍵盤とペダル、63ストップ、新しくて大きな楽器で、祭壇に向かって左側の高い所に“つばめの巣”のように 設置されていました。パッヘルベルとバッハの前奏でミサは始まりました。ミサはフランス語とオランダ語の2ヶ国語で、 フランス語での証しの後、別の司祭がオランダ語で・・オランダ語はドイツ語に似ているので、何となく意味は伝わってきますが、 果たして2ヶ国語のお説教は同じ内容だったのでしょうか。地下鉄の駅も2ヶ国語で2つの駅名があるのですから混乱します。言葉だけでなく、 この街には肌の色、髪の色、顔立ちの違う様々な人種の人が住んでいます。 厳粛なミサの後は、Grenzingのオルガンらしい (スペインのオルガンビルダーで、日本には新潟市民芸術文化会館にあります) 輝かしく、また力強い音色でバッハのフーガが演奏され、最後まで席を立たずオルガンに耳を傾けていた会衆から拍手が起こり、 オルガニストのJozef Sluys氏はバルコニーから会釈するシーンも。演奏台はオルガンの中央あたり、水平に突き出したトランペット管の 下にあります。高い場所、しかも簡単な手すりひとつで怖そう。私は久しぶりに大聖堂に響くオルガンの響きに包まれ、 ああ、またこういう響きが聴けた!パワフルな音から、大きな励ましの力を与えられました。この街にも、私の居場所があったような安堵感も。翌日ほかの教会で開催された オルガンコンサートに行くと、カテドラルのオルガニストJozef Sluys氏が偶然にも私の後ろの席に。そしてあちら からお声をかけてくださったのには驚きでした。 フランス語圏のせいか、ドイツとも随分勝手が違います。電車は遅れるし、地下鉄やトラムも時刻表通りではないし、 駅、マーケット、何するにも待たされるし、日頃、東京でスピーディで便利な生活をしていると、慣れるまでに 時間がかかりますね。何語の表記かわかりませんが、アパートメントの洗濯機、食洗器、電子レンジとも格闘してしまいました。 ソーセージも種類が豊富で美味しいのですが、一度オーブンに入れたらカチッカチに!種類に合った調理法があるのでしょう。 ビールも種類が豊富、甘いチェリービールよりも濃厚な修道院ビールが好みかな。サッカーのワールドカップはドイツ語放送で観戦、 “Gelbe Schild!”はイエロー・カード、なるほど。 ブリュッセルは3回目ですが、街の印象は訪れる度に変わるものです。今回はグラン・プラスのカフェのテラスで お茶やビールを楽しむ人達を横目で見ながら、教会巡り。帰国する日もパリ行きのタリスが出る時刻ギリギリまで教会 でオルガンを聴いたり、見たりし、歴史のあるオルガンにも出会いました。オルガニストや教会関係の方とも コンタクトができ、来月また渡欧しますが、その時にはそうした楽器を弾かせていただけるという約束もできました。 言葉や文化が違う遠くの国へ行っても、私にはどこでも共通な“オルガン語”があるな、と思うのでした。
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