オルガニスト楽屋話

第80話 ベルギー滞在記 ---2006.11.10.

歴史のある建築物、古い教会、レンガ作りの家々、カリヨンの鳴る塔楼、豪華なファサードの市庁舎、 石畳の道、そして美しい花と緑がベルギーのどの街に行っても迎えてくれました。この夏は2回渡欧し、 ブリュッセルを中心にしばらく滞在、フランス語圏で初めての40日という長期滞在は、 合理的で整っているドイツ、便利な日本に慣れている私にとって、初めは不便で慣れないことばかりで 奮闘の毎日でした。オルガンを聴いたり、弾いたりなどの色々なスケジュールのほか、全て のんびりペースですから買い物や移動など日々の生活何をするにも時間がかかってしまい、お陰で どこへ行くのも急ぎ足。街並に目が向けられる余裕ができたのは本当に最後の数日間でした。

右の写真はカテドラルの新しいオルガンですが、大きな教会がたくさんあり、そこには 150年ほど前のロマンティックな楽器が保存されていました。いくつかの楽器を弾かせていただきました。 弾いたことがないような古いシステムだったりで、楽器を知るまでに時間もかかったりでしたが、 柔らかな響き、よく歌うフルート管など日本にはないような楽器に出会うことが出来ました。 楽器ばかりではなく、演奏台に行き着くまでの教会の扉、階段、取手、鍵など全てが年代物で、 すりへった階段や少々扱いの難しい鍵などに触れると、そのオルガンを弾いた人々の息吹も感じられるのでした。 オルガンだけではありません、古いものを大切に生かし残しているこの国の人々の姿勢がよくわかりました。

ネットで探した家具付きのアパートメントで自炊の生活は、ホテル住まいとは違い、 その地で生活してる感覚もありました。あちらの食材を使ってお料理したり、スーパーで日用品を探したり、 旅で訪れたブリュッセルとはまた違うことを経験できました。 換気扇が突然バタバタと大騒音たてたり、洗濯機、乾燥機など 壊れることは日常茶飯事。地下鉄のドアが開かないこともしばしばで、乗れない、降りれない、となるわけですからあわてます。 エレベーターが途中で止まり、閉じ込められてしまった時は本当にあわてました。 静止しているならまだしも、周期的にガタガタと大きく揺れるのですから、生きた心地がしませんでした。 非常ベルを押すとインターホン越しに「落ち着いてください!大丈夫ですから」という声は聞こえるものの、 約10分間密室に一人で・・・恐怖でした。

いろいろな経験をしましたが、古き良きものが大切に保存され、歴史が残った、とても“味”のある街でした。また ヨーロッパの交通の要にあたりどこへ行くのも便利で、滞在中、ベルギー国内はじめドイツ、フランス、オランダにも足を伸ばし、 聴いたり、見たり、恩師や旧友に会ったり、有意義な時を過ごすことができました。これから滞在中の出来事、 経験したことなどなど、少しずつご報告していきたいと思っています。滞在中の写真は、こちらをご覧ください。

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