オルガニスト楽屋話
第86話 ふらっと、ドレスデン、ライプチヒへ ---2007.8.15.
ブリュッセルでの演奏会の後、ドレスデンとライプチヒを訪ねました。
どちらの街も10年前に訪ねてから2回目ですが、あちらこちらで大規模な工事中、
東西ドイツ統一前の古い建物が新しくモダンな建物へと、駅や道路もきれいに建て直され、
随分様子は変わっていました。
まずはドレスデンへ。第2次世界大戦の空爆で滅茶苦茶に壊されてしまったこの街ですが、いま物凄い急ピッチで復旧、
復元、そして当時の姿を忠実に再現しようとする工事が進んでいます。前回訪れた時には、まだ瓦礫の山で、
募金活動が行われていたFrauenkirche(聖母教会、左の写真の教会です)は完成していました。新しいオルガン(メッツラー)
も完成し、その音色を聴きながら礼拝に出席、感無量でした。そのほかジルバーマンオルガン(バッハの時代のオルガン製作家)の
あるHofkirche(カテドラル)、そしてKreuzkirche(聖十字架教会)のドレスデンを代表する3つの教会のオルガンを聴き、それから1918年に建てられ、
ワーグナーも音楽監督を務めていたゼンパーオーパー(オペラハウス)でオペラ「アイーダ」を見る機会も。
大きく立派で装飾や彫刻がたくさんほどこされた建築物、歩いていても街ごと美術館のような街、ドレスデン。
2006年10月に開館したという「歴史的緑の丸天井Gruene Gewolbe」では、世界屈指の細工師などに
依頼し作らせた宝飾品、宝石、家具が陳列され、当時のザクセンの権力を知らされるような、奇麗なものもたくさん見ました。
美しい音楽と美術に溢れた、歴史のある芸術的な街ですね。
ドレスデンで4日ほど過ごした後、汽車で約1時間、まだ6月というのに真夏のような、ドイツでは滅多に経験しないような
暑さの中、ライプチヒに到着。着いてみると、偶然にも“バッハ音楽祭”の真っ最中でした。急遽、予定変更でコンサートの梯子をすることに。
コンサートもいろいろ聴きましたが、一番感激また感動したのは、聖トーマス教会(バッハが合唱長、オルガニストをしていた教会です)での『バッハの時代の礼拝
形式での日曜礼拝』に出席できたこと。朝9時半、オルガンの前奏はバッハが尊敬し作曲技法のお手本にしたブクステフーデの「前奏曲」、途中にはソリスト、トーマス合唱団、オーケストラで
教会暦にあったバッハのカンタータが演奏され、バッハがこの教会でオルガニストや指揮者として活躍していた当時の礼拝を
忠実に再現したものでした。オルガニストは以前日本でジョイントコンサートをしたことのある
ウーリッヒ・ベーメ氏、このことにも親近感が。彼が“バッハ・オルガン”での会衆の讃美の伴奏、最後には聖餐式があり私もパンと葡萄酒を賜り、終わったのは12時、2時間半のとても
長い礼拝でしたが、バッハの時代にタイムスプリット、非常に興味深い体験でした。(右の写真はトーマス教会の礼拝直前に。)
ライプチヒを代表するもうひとつの教会である聖ニコライ教会、それからゲヴァントハウス(シュケ・オルガン)で、オルガンコンサートを聴く機会にも遭遇。
ヨーロッパのコンサートホールでオルガンコンサートを聴く機会は初めてでした。ゲバントハウス・オーケストラも“バッハ音楽祭”に向け、特別コンサート。
それはバッハのオルガン曲を、オルガン独奏と、シェーンベルクのオーケストラ編曲版とで演奏し聴き比べ、、というプログラムでした。
な〜んだ、これはコバケンさんと日フィルでよく弾かせていただいてる企画と同じでは〜!!と。
そういう演奏会のあるその日に私がライプチヒにいた偶然に、驚くばかりでした。
ゲバントハウスはサントリーホールと同じようなワインヤード型のホールですが、天井が高く響きが良く、当日の会場は満席、華やかに着飾り、
とにかく皆が楽しんでいる、クラシック音楽が根付いていることを痛感しました。
現地のオーケストラもオルガニストも、機会があれば日本でも聴けますが(帰国してから知ったのですが、その日オルガンを弾いていたシェーンハイト氏は
今秋初来日、大阪いずみホールで演奏します)、やはり慣れた彼らのホール、弾き慣れた自分のオルガンで、それから私もドイツ語を話し、
その地の空気を吸い、その地のお料理やビールやワインを飲み、その地に身を置いて聴くのはまた違うものでした。
ベルギーでの演奏会の後、ふらっと、何の準備もせず立ち寄ったドイツでしたが、まるで私を待っていてくれたかのような
偶然な機会が続くことに。思いもかけず、期待以上の貴重な経験ができた旅になりました。
(写真はこちらをご覧ください。)
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