オルガニスト楽屋話

第94話  白石ホワイト・キューブ、あれから10年 ---2008.3.29.

宮城県白石市、新幹線の白石蔵王駅近くにあるコンサートホール“ホワイト・キューブ”は 開館10周年を迎えました。ダイナミックな演奏を可能にする大きなコンサート・オルガンが、 ホールとしては日本一長い残響を持つユニークなガラスのホールに設置されています。 オープニングのコンサートではオーケストラと、その後ソロコンサートで、それからこの特殊稀な響きの中でCD録音も させていただきましたが、開館2年後から「オルガン教室」が始まり、昨年からは 約10名のオルガン愛好家が集まり「オルガン・サークル」となり、私は8年間にわたり月に1度、最近は 2,3ヶ月に1度の頻度で指導にあたってきました。

手とり足とりのレッスンから始まり、大オルガンを弾きこなせるまでには時間もかかりましたが、 今月23日、第1回目の発表の場である演奏会が開かれました。プログラムは白石のオルガンの 可能性を存分に生かした曲ばかり、白石でしか再現できない、白石にしかない音色を使っての 演奏、また自作自演、ご自身で編曲されての演奏もあり、 約2時間半にわたっての熱演が繰り広げられました。プロフェッショナルな演奏とは違うかもしれませんが、 オルガンへの情熱は誰よりも大きく、また会場は家族やご友人で溢れ、より身近に聴いていただけ親しんでいただける会で あったように思えました。

緊張の場面にさらされ、予期しないようなハプニングもありましたが、演奏を終えた 後、緊張感から開放された瞬間またすぐに「弾きたい」という声があがり、これをひとつの 踏み台にさらなる展開が期待できそう。そして私もパワーを与えられました。

10年前、この地にはホールもオルガンも、何もなかったところです。オルガンができ、 そのオルガンを聴き、弾いてみたいという気持ちが沸き、そして演奏できるまでに成長しました。 オープニングの華やかなコンサートも喜びでしたが、10年経ち、文化が この地に根付いたことを 感じられるこの日は感慨深いものでした。10年前の開館時、こんな日が訪れるなんて夢にも思わなかった! 一気に春めき折しも復活祭(イースター)、 打ち上げ会ではみな笑顔。私は暖かく嬉しい余韻に浸りながら帰宅の途につきました。 (写真は終演後、演奏台を囲んで・・)


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